-
トップ
>
-
へいみん
此の
日も
周三は、
畫架に
向ツて、
何やらボンヤリ
考込むでゐた。モデルに
使ツてゐる
彼の
所謂『
平民の
娘』は、
小一
時間も
前に
歸ツて
行ツたといふに、周三は
尚だ畫架の前を
動かずに考へてゐる。
露國は
政治上に
立て
世界に
雄視すと
雖もその
版圖の
彊大にして
軍備の
充實せる
丈に、
民人の
幸福は
饒ならず、
貴族と
小民との
間に
鐵柵の
設けらるゝありて、
自からに
平等を
苦叫する
平民の
聲を
起し
ト僕ガ言つてはヤツパリ
広目屋臭い、
追て
悪言を
呈するこれは
前駆さ、
齷齪するばかりが
平民の能でもないから、今一段の
風流気を
加味したまへ
但し
風流とは
墨斗、
短冊瓢箪の
謂にあらず(十五日)