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きみわる
ガラガラとガラスの
破片のとびちる音が
気味悪くひびいた。
同時にくるいたったくまは
一声高くうなると、自分を目がけてとびかかってきた。
もういくら待つても
人通りはない。
長吉は
詮方なく疲れた眼を
河の
方に移した。
河面は
先刻よりも一体に
明くなり
気味悪い雲の
峯は影もなく消えてゐる。
此の
奧に
住める
人の
使へる
婢、やつちや
場に
青物買ひに
出づるに、いつも
高足駄穿きて、なほ
爪先を
汚すぬかるみの、
特に
水溜には、
蛭も
泳ぐらんと
氣味惡きに、
唯一重森を
出づれば
『まあ、
醜い
魚です
事。』と
少年は
氣味惡相に、
其堅固なる
魚頭を
叩いて
見た。