“きずあと”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
傷痕50.0%
創痕20.5%
疵痕11.4%
傷跡3.4%
2.3%
痕跡2.3%
瘡痕2.3%
瘢痕2.3%
創跡1.1%
損所1.1%
(他:3)3.3%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
それだけに、一層戦友の言葉は、ちょうど傷痕きずあとにでもれられたような、腹立たしい悲しみを与えたのだった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
月代さかやきに十字の傷痕きずあとまげにマリヤの笄を刺された孫兵衛は、まったくひとつの呪縛にかかりました。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関東地震や北伊豆地震のときに崩れ損じたらしい創痕きずあとが到る処の山腹に今でもまだ生ま生ましく残っていて何となく痛々しい。
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
クリクリ坊主のおでこが脳天から二つに割れて、又喰付くいつき合った創痕きずあとが、まゆの間へグッと切れ込んでいるんだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
したがって、後日これを彼がおもいだすとき、ただ憶いだしたと云うだけでも腹立たしくなるような疵痕きずあとになった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
春先になれば、古い疵痕きずあとに痛みを覚える如く、軟かな風が面を吹いて廻ると、胸の底に遠い記憶が甦えるのであります。
春風遍し (新字新仮名) / 小川未明(著)
別に特別の発見もなかったが、唯一つ、右の拇指ぼしの腹に針でついたほどの浅い傷跡きずあとがあって、その周囲だけが疣状いぼじょう隆起りゅうきし、すこし赤味が多いのを発見した。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「證據は澤山ある。欄間の障子は少しげて居るし、火鉢には揉み消した短かい火繩が埋めてあつた——主人の胸の傷跡きずあとや、柱の彈丸たまの跡は、納戸のはりから撃つたにしては、勾配こうばいが少し違ふ」
ないというのはおかしいが、太刀で斬られたきずあとの肉が変に縮んでしまったのかも知れない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此時は足拵あしごしらえがよかった為めに凍傷にもかからずに済んだが、一月の中旬、金峰きんぷ山麓の増富鉱泉から、木賊とくさ峠を踰えて黒平くろべらへ出た時の旅では、何等の用意もしないで、三日の間二尺に余る積雪中を辿り歩いた報いは覿面てきめんで、今だにきずあとが寒さに痛む程の凍傷を受けた。
冬の山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
冬空をよぎった一つの鳥かげのように、自分の前をちらりと通りすぎただけでその儘消え去るかと見えた一人の旅びと、……その不安そうな姿が時の立つにつれていよいよ深くなる痕跡きずあとを菜穂子の上に印したのだった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「帯刀様のご様子を見ると、大分だいぶ玄卿とはご懇意らしい。だがマアそれはよいとして、さてその時の話だが、物騒な方面へ及んだものさ。と云うのはほかでもない、毒薬の話に花が咲いたのさ。どんな毒薬で人を殺したら、後に痕跡きずあとが残らないかなどとな」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕には自分になびかない女を無理にく喜こびよりは、相手の恋を自由の野に放ってやった時の男らしい気分で、わが失恋の瘡痕きずあとさみしく見つめている方が、どのくらい良心に対して満足が多いか分らないのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ずっと下って天保年間、東両国に小屋を出した目吉めきちの化物屋敷と、変死人見世物は、年代記物になるほどの人気を呼びましたが、奥山の化物屋敷は、それよりずっと前で、興行元はとどろき権三ごんざ、四十そこそこの浪人者上がり、額の左口に物凄い瘡痕きずあとのある、その仲間では顔の利いた男でした。
女は思ひ入つた調子でかう云つて、男の左の手を握つた。その手の甲から腕の関節にかけて、二寸程の細長い瘢痕きずあとのあるのをぢつと見つめた。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
「私の腕や、瘢痕きずあとだらけの顏を見たときには、ジエィン、あなたはぞつとしたでせうね。」
然しこの梵字の創跡きずあとだけは
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「敷居にのみを押し込んだ損所きずあとがあるとか、雨戸に破れがあるとか、格子に動くか拔けるのがあるとか——」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
ところが、調査の結果は、はたして彼の云うがごとく、その茎には六個所ほど、最近に葉をもぎ取ったらしい疵跡きずあとが残されていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかも古来たびたび、匈奴きょうどの南下に侵された歴史の古い痍跡きずあとは、今とて、どこかここの繁華に哀しい陰翳いんえいを消していない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その像は巡礼の衣を著しももに黒死病のきずあとを帯び、麪包を啣えた犬を従えたものだ。