えい)” の例文
あなたがたがそれをれるか、れないかはまったべつとして、かくわたくしえいじたままを率直あからさまべてることにいたします。
其頃そのころ宗助そうすけいまちがつておほくの友達ともだちつてゐた。じつふと、輕快けいくわいかれえいずるすべてのひとは、ほとんど誰彼だれかれ區別くべつなく友達ともだちであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから、くる/\といてポケツトにさし込んで來たしう雜誌ざつしをひろげて、この春に來る外國えい畫のスチルをながめはじめた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
春星しゆんせいかげよりもかすかに空をつゞる。微茫月色びばうげつしよく、花にえいじて、みつなる枝は月をとざしてほのくらく、なる一枝いつしは月にさし出でゝほの白く、風情ふぜい言ひつくがたし。
花月の夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
彼等は無数の人々の視線の彼等の背中に集まるのを感じた。いや、彼等の心臓さえはっきりと人目にえいずるのを感じた。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さういふ村落むらつゝんで其處そこにも雜木林ざふきばやしが一たいあかくなつてる。先立さきだつてきはどくえるやうになつた白膠木ぬるでくろつちとほあひえいじてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ここでは親も狐、子も狐であって、しかも静と忠信狐とは主従のごとく書いてありながら、やはり見た眼は恋人同士の道行とえいずるようにたくまれている。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれど、とりんでゆくかなたのそらだけは、あかるい、なんとなくなつかしいいろを、ひとみえいじたのでありました。
はてしなき世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんなわけだから、一眼いちがんになって異常な視神経の発達により、普通の人には到底とうてい見えない赤外線までが、アリアリと彼女の網膜もうまくにはえいずるようになったのだ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆきはいよ/\つもるともむべき氣色けしきすこしもえず往來ゆきゝ到底とてもなきことかと落膽らくたんみゝうれしや足音あしおとかたじけなしとかへりみれば角燈かくとうひかゆきえい巡囘じゆんくわい査公さこうあやしげに
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その上、彼女の眼には私の人柄ひとがらや身分や話が如何にも怪しくえいじたに違ひなかつた。彼女は頭を振つた。
元日が最もはげしく、暮れたばかりの夜空に、さながら幾千百の銀蛇ぎんだが尾をひくように絢爛と流星りゅうせいが乱れ散り、約四半時はんどきの間、光芒こうぼうあいえいじてすさまじいほどの光景だった。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
西行は、灰の白さと、真っ赤な火の、えいじ合う美しさに、うっとりしていたが、面をあげて
あのあまくしてやはらかく、たちまちにして冷淡れいたん無頓着むとんちやくな運命の手にもてあそばれたい、とがたい空想にられた。空想のつばさのひろがるだけ、春の青空が以前よりも青く広く目にえいじる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
斷崖だんがいうへ欄干らんかんもたれていこつたをりから、夕颪ゆふおろしさつとして、千仭せんじん谷底たにそこから、たき空状そらざまに、もみぢ吹上ふきあげたのが周圍しうゐはやしさそつて、滿山まんざんくれなゐの、大紅玉だいこうぎよく夕陽ゆふひえいじて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
前日来の艱酸かんさん辛労しんろうとは茫乎としてうたゆめの如し、一行皆沼岸にしておもむろに風光を賞嘆しやうたんしてまず、とほく対岸を見渡みわたせば無人の一小板屋たちまち双眼鏡裡にえいじ来る、其距離きより凡そ二里
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かく精神は落ち着き、自覚したのちでも化物ばけものかたちがハッキリと目にえいじていた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かれの眼にえいじた大河無門と荒田老とは、まさに場内の好一対こういっついであった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
他の一部の人達にとりて、此等これらの通信は単に珍らしいものというにとどまり、又或る人達の眼には、単なる愚談とえいずるであろう。私は決して一般の歓迎を期待して、本書の刊行をするものではない。
其単純な眼にえいじた第一印象の実録である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
歌麿の目にえいじた。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かれんでゐるものは、活字の集合あつまりとして、ある意味を以て、かれあたまえいずるにはちがひないが、かれの肉やまはる気色は一向見えなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つちすべてを段々だん/\刺戟しげきしてほりほとりにはあしやとだしばやくさそらあひえいじてすつきりとくびもたげる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
(あっ、あそこだわ!)炯眼けいがんなる彼女の小さな眼にえいじた一つの異変! それは高い天井の隅にある空気抜きの網格子あみごうしが、ほんのちょっと曲っていたことである。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
忽然こつねんとしててんひらけ、身は雲に包まれて、たえなるかおりそでおおい、見るとうずたかき雪の如く、真白ましろき中にくれないちらめき、みつむるひとみに緑えいじて、さっと分れて、一つ一つ、花片はなびらとなり、葉となって
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一面の琉球りうきう藺は伐採ばつさいを受けざる為め茸々しやう/\として沼岸に繁茂はんもし、沼辺の森林しんりん欝乎うつことして水中にえいじ、翠緑すゐりよくしたたる如く、燧岳の中腹は一帯の雲烟うんえんとざされ夕陽之に反照はんせうす、其景の絶佳ぜつかなる
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ぼく学校がっこうへおいでよ、花園はなぞのせてあげるから。」と、友吉ともきちが、いうと、りょう一のに、先刻さっきもらったような、あおはなや、あかはなの、わたすかぎりほこる、うつくしい花園はなぞのえいじたのであります。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
今迄いままで宗助そうすけこゝろえいじた御米およねは、いろおと撩亂れうらんするなかつてさへ、きはめていてゐた。さうしてそのきの大部分だいぶぶん矢鱈やたらうごかさないはたらきからたとしかおもはれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼等かれらあひだ惡戯いたづらきな五六にんけてからそつと勘次かんじにはつてた。ときたゞ自分等じぶんら陰翳かげやゝながにはつちえいじて、つき隙間すきまだらけのふるぼけた雨戸あまどをほのかにしろせてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
山のの月にえいじて、ただ独りたたずみたり。……これからよ、南無妙。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喧嘩けんくわの一部分として、ひとおこらせるのは、おこらせる事自身よりは、おこつたひと顔色かほいろが、如何に不愉快にわがえいずるかと云ふ点に於て、大切なわが生命をきづつける打撃にほかならぬと心得てゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちから文字もんじえいじて、如何いか相違さうゐがあるかを御覧ごらんれやう。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
代助のにはそれがぱつとえいじた丈で、すぐ刺激を失つて仕舞つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)