すなは)” の例文
津浪つなみとはなみすなはみなとあらはれる大津浪おほつなみであつて、暴風ぼうふうなど氣象上きしようじよう變調へんちようからおこることもあるが、もつとおそろしいのは地震津浪ぢしんつなみである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
十一文づゝ二年半餘はんあまりもとゞこふらば大抵たいてい三十文ばかりの引負ひきおひとなるべし。閏月しゆんげつすなはちこの三十文の引負ひきおひを一月にまとめてはらふことゝるべし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
労働には他の貨物と同じく自然価格すなはち一家の生活標準を以て労働者及び其の家族を維持するに必要なる価格あり……といふくだりだ。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
カントの超絶てうぜつ哲学てつがく余姚よよう良知説りやうちせつだいすなはだいなりといへども臍栗へそくりぜに牽摺ひきずすのじゆつはるかに生臭なまぐさ坊主ばうず南無なむ阿弥陀仏あみだぶつおよばず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
苾堂の妻ためは大下の置鹽氏から來り嫁した。ための父すなはち苾堂の岳父は置鹽蘆庵ろあんで、母即ち苾堂の岳母は蘆庵の妻すなである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
妙齡としごろいたらせたまひなば、あはれ才徳さいとくかねそなはり、希有けう夫人ふじんとならせたまはん。すなはち、ちかごろの流行りうかう良妻賢母りやうさいけんぼにましますべし。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すなは此所こゝ市長しちやうならび町會議員ちやうくわいぎゐんみな生物知ゝまものしりの町人ちやうにんである、であるから醫師いしることは神官しんくわんごとく、ところ批評ひゝやうせずしてしんじてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あれも拙者などに云わせると売名上手のはらなし書生だ、回天詩史の中に『すなはち直に夷人の舎に入り臂力をふるひ、夷虜をみなごろしにし』
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
A イヤ、あれは本統ほんとうだよきみ。ちやんと新聞しんぶんいてあつた。それを精密せいみつ記憶きおくしてるのがすなはおれ頭腦づなう明晰めいせきなる所以ゆゑんさ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
こんなことがたびたび起るわけは、一つは猫どもの無精なたちと、も一つは猫の前あしすなはち手が、あんまり短いためです。
すなは戰時中せんじちう膨張ぼうちやうした日本にほん經濟けいざい戰後せんごおい收縮しうしゆくした状態じやうたいついての國民自體こくみんじたい自覺じかく喚起くわんきすることが非常ひじやう必要ひつえうである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
すなは太古たいこ國民こくみんかならずしもいし工作こうさくして家屋かをくをつくることをらなかつたのではない。たゞその心理しんりから、これを必要ひつえうとしなかつたまでゞある。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
将来に於ける人間の生存上赤裸々せきらゝなる腕力の発現が、大仕掛おほじかけの準備、すなはち戦争といふ形式を以て世の中に起るとすれば、それを解釈するものは
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今日こんにち世界せかい最大さいだいふねながさ二百三十ヤード、すなはちやうにして二ちやうゆるものもある、本船ほんせんごときもその一で、競走レース前部甲板ぜんぶかんぱんから後部甲板こうぶかんぱんへと
労農ロシアの影響だらうと思ふが、曾若夫人はすべての南京の若夫人のやうに「女同志ニウトンツ」——すなはち、准将校服に革ゲートルをつけたまゝで出て来た。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
八丁堀の笹野の旦那、すなはち與力筆頭の笹野新三郎は、平次に取つては第一番の知己ちきでもあり、恩人でもあつたのです。
虚妄きよばうとなすにあらざる以上は太田の行為——すなはちエリスを棄てて帰東するの一事は人物と境遇と行為との関係支離滅裂なるものとはざるからず。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
斯樣かやうにすれば自分じぶん發明心はつめいしん養成やうせいし、事物じぶつむかつて注意力ちゆういりよくさかんにするやうになりませう。すなは學生がくせい自營心じえいしんやしな獨立心どくりつしんやしな所以ゆゑんでありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
させて頂きます。しかし、いさゝかちがつた風に、すなはち一字だけではなく、二三の言葉を射ぬくことにいたしませう。
風変りな決闘 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
きみつて呉起ごきして(一〇二)ともかへり、すなは(一〇三)公主こうしゆをしていかつてきみかろんぜしめよ。呉起ごき公主こうしゆの・きみいやしむをば、すなはかならせん
杜鵑とけん亭の食堂はすなはち道のり込んだ空地あきちなのであるから十四五分して小さい料理店の家の中から客を見附けた給仕女が布巾ふきんを持つて出て来て卓を拭く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
呼び出すに付七右衞門はすなはち自身番へ罷出し所役人やくにん申ける其の方儀此度このたび山口惣右衞門のたのみにつて嘉川藤五郎兄弟并に建部がう右衞門伴すけ十郎の人々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうしてモデルツて來るモデルもモデルもかたはしから刎付はねつけて、手蔓てづるてやツとこさ自分で目付めつけ出したモデルといふのがすなはちお房であツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
群衆心理はすなはち衆愚心理なのであるから、皆自から主たるあたはざるほどの者共が、相率あひひきゐて下らぬ事を信じたり、下らぬ事を怒つたり悲しんだり喜んだり
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
すなはち彼は自ら罰せられてをるのぢやから、君は君としてうらみいて可からうと思ふ。君がその怨を釈いたなら、昔の間にかへるべきぢやらうと考へるのじや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すなはち新らしき一対の夫婦めをと出来あがりて、やがては父とも言はるべき身なり、諸縁これより引かれて断ちがたきほだし次第にふゆれば、一人一箇の野沢桂次ならず
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
玉川向たまかはむかふ、すなは神奈川縣下かながはけんかぞくする方面はうめんには、あま有望いうぼう貝塚かひづかい。いや貝塚かひづかとしては面積めんせきひろく、貝層かひそうふかいのがいでもいが、土器どき出方でかたはなはわるい。
平民新聞へいみんしんぶん創刊そうかんすべきは其門前そのもんぜんよりも其紙上そのしゞやう酸漿提灯ほうづきてうちんなき事なり各国々旗かくこく/\きなき事なり市中音楽隊しちうおんがくたいなき事なり、すなはいつ請負》文字《うけおひもんじ損料文字そんれうもんじをとゞめざる事なり。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
其の意に以為おもへらく、国民性すなはち国民の美質を描かざる小説は国民的性情を満足せしめざる小説なり
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
すなは作者さくしや精神せいしんめて脚色きやくしよくしたるもの、しかしてその殺人罪さつじんざいおかすにいたりたるも、じつれ、この錯亂さくらん、この調子てふしはづれ、この撞着どうちやくよりおこりしにあらずんばあらず。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
都会の水に関して最後に渡船わたしぶねの事を一言いちごんしたい。渡船わたしぶねは東京の都市が漸次ぜんじ整理されて行くにつれて、すなはち橋梁の便宜を得るに従つてやがては廃絶すべきものであらう。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
経久ひてとどめ給ふとも、ひさしきまじはりを思はば、ひそかに商鞅叔座がまことをつくすべきに、只一三八栄利えいりにのみ走りて一三九士家しかふうなきは、すなはち尼子の家風かふうなるべし。
少しも心配するに及ぶまい、日露戦争に反対するのだから、すなは売国奴ばいこくどと言ふべきものでは無いか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
この主人公がすなはち二人の山の中から出身した昔の無頼漢ぶらいかんなるもので、二十年前には村の中にも其五尺の身を置く事が出来なかつたのであるが、人間の運といふものは解らぬ者で
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
下りて七合目に至る、霜髪のおきな、剛力の肩をも借らず、杖つきて下山するに追ひつく、郷貫きやうくわんたゞせば関西の人なりといふ、年歯ねんしを問へば、すなはこたへていはく、当年八十四歳になります!
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
中根なかねはあのとき自分じぶん危急ききふわすれてぢうたかげて『ぢうつてくれ‥‥』と、おれむかつてつたのだ。すなはぢうあいまも立派りつぱ精神せいしんしめしたのだ‥‥」と、軍曹ぐんそうがいがいした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
すなはち現在二人が如何なる人生観を有つてゐるか、それが将来如何に変化してゆくだらうかといふ点まで考へないことである。結婚が人生の大きな時期エポツクを作るものであることは申すまでもない。
評家久しく彼を目するに高踏派の盟主を以てす。すなはち格調定かならぬドゥ・ミュッセエ、ラマルティイヌの後にで、始て詩神の雲髪をつかみて、これに峻厳しゆんげんなる詩法の金櫛きんしつを加へたるが故也。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
かれいそがしい仕事しごとしまひになつたときすなは稻刈いねかりから稻扱いねこきからさうしてもみすりもんでかれ得意とくい俵編たわらあみもなくなつて、世間せけんがげつそりとさびしくしづんだときかれきふ勘次かんじべつまひがたくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「良寛のゐるのはここですが。さうしてこのわしがすなはち良寛ぢやが。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
私の孫が幾つぐらゐのとき、私はこの世から暇乞いとまごひせなければならないだらうか。人間の小さい時には親に死なれても、涙など出ないものである。すなはち、大人のやうに強い悲しみが無いものである。
(新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
すなはち変へらるるなり。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
すなはもの證明あかしなり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
すなは一時いちじ活動かつどうしたのちは、暫時ざんじ休息きゆうそくして、あるひ硫氣孔りゆうきこう状態じようたいとなり、あるひ噴氣孔ふんきこうとなり、あるひはそのような噴氣ふんきまつたくなくなることがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
だから、それだから、行留ゆきどまりかなぞと外聞ぐわいぶんわることをいふんです。——そも/\、大川おほかはからここへながくちが、下之橋しものはしで、こゝがすなは油堀あぶらぼり……
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
通常つうじやう人間にんげんは、ことも、わることみな身外しんぐわいからもとめます。すなは馬車ばしやだとか、書齋しよさいだとかと、しか思想家しさうか自身じしんもとめるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
俗界ぞくかいける小説せうせつ勢力せいりよくくのごとだいなればしたがつ小説家せうせつかすなはいま所謂いはゆる文学者ぶんがくしやのチヤホヤせらるゝは人気じんき役者やくしやものかづならず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
獨樂こま自分じぶん一度いちどまはるはすなは地球ちきう自轉じてんといふものにて、行燈あんどうかたむきたる半面はんめんひるとなり、うら半面はんめんとなり、この一轉ひとまはり一晝夜いつちうやとするなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
低落ていらくして十二ぐわつすゑには百六十二・九九となり六ぐわつくらべて十三・三二すなはち七りん下落げらくとなつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
「二十年前人手にかゝつて相果てたといふことだ。——その場に居合せて、早速の敵を討つてくれたのが、碓氷うすゐ貞之助殿——すなはち翁屋小左衞門殿だ」