齒痒はがゆ)” の例文
新字:歯痒
疾風しつぷうの如く飛んで行く八五郎、その忠實な後ろ姿を見送つてどうして今まで手を拔いてゐたか、平次は自分乍ら齒痒はがゆい心持でした。
鋭敏えいびん作用はたらきをすることがある………たとへば何か待焦まちこがれてゐて、つい齒痒はがゆくなツて、ヂリ/″\してならぬと謂ツた風にさわぎ出す。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
愚物ばかだわねえ!』とあいちやんはおほきなこゑ齒痒はがゆさうにしましたが、『だまれ!』と白兎しろうさぎさけんだので、いそいでめました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ただ吩咐いひつけばかりいてるので自分じぶん機轉きてんといふものが一かうなかつたりするのでひど齒痒はがゆおもつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
見て安間平左衞門は生得しやうとく大膽不敵だいたんふてき曲者くせものなれば主人の答を齒痒はがゆきことに思何とか口を利たき體に控居たり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
玄竹げんちく翌朝よくてういて齒痒はがゆおもつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
八五郎にしては、此處まで追ひ込んだ曲者を逃す、平次の押しの弱さが齒痒はがゆくてならなかつたのでせう。
あんまり齒痒はがゆいから、あつしは深川の尾張屋の親分を呼んで來て、陽のあるうちに下手人を縛つて貰はうと思つて飛んで來たんだが、橋の上で錢形の平次親分と鉢合せをするなんざ
それを齒痒はがゆさうに見てゐた金之助は、我慢がなり兼ねて横合ひから手を出しました。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
平次は到頭癇癪玉かんしやくだまを破裂さしてしまひました。少しでも新しい事件を手掛けさせて、腕も顏もよくさせようといふ親心も知らずに、仕事の選り好みなどする八五郎が齒痒はがゆかつたのでせう。
主人善兵衞の煮え切らないのが齒痒はがゆかつたのか、正面きつて疊みかけるのです。
半之丞父娘おやこも、そんな事を疑はないではありませんが、お組の愛におぼれた相澤半之丞、さすがにさうと斷定も出來ず、それを又齒痒はがゆいことに思つて娘のお秀が、平次へ頼みこんだのでせう。
それを自分の手落ちにして、ひどくしをれてゐるお靜や、岡惚れ帳に書き入れ損ねて、がつかりしてゐる八五郎の顏を見ると、平次は齒痒はがゆく馬鹿々々しく、そして腹立たしくさへ感ずるのでした。
處女心をとめごころの頼りなさ、平次は齒痒はがゆくなるばかりです。
相變らず平次の潔白さが齒痒はがゆくなります。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
平次は齒痒はがゆさうに默つてをりました。
八五郎はそれが齒痒はがゆさうでした。
八五郎は齒痒はがゆさうでした。