鳴出なりだ)” の例文
日暮方から鳴出なりだした雷は益々ますますすさまじくなって、一天いってん墨を流したようで、篠突しのつく大雨、ぴかりぴかりといなずまが目のくらむばかり障子にうつって、そのたびに天地もくつがえるようにいかずちが鳴り渡る
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼も初めての事なので、薄気味るく、うとうとしていると、最早もう夜も大分更けて、例の木枯こがらしの音が、サラサラ相変らず、きこえる時、突然に枕許まくらもとの上の呼鈴べるが、けだだましく鳴出なりだしたので
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
大沼おほぬまみづたゞかぜにもらずあめにもらぬ、灰色はいいろくもたふれたひろ亡体なきがらのやうにえたのが、みぎはからはじめて、ひた/\と呼吸いきをしした。ひた/\とした。かすかにひた/\と鳴出なりだした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)