おどろい)” の例文
おどろいて、更に視線を転ずれば、太き松の根方に設けたる葭簀よしずの蔭に、しきりに此方こなたを見ては私語しつゝある五六の婦人を発見せり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
もう二十年若くばただおけぬ品物めと腰は曲っても色に忍び足、そろ/\と伺いより椽側えんがわに片手つきてそっと横顔拝めば、おどろいたりお辰、花漬売に百倍の奇麗をなして
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
里俗鰡堀りぼくりゅうぼり差懸さしかかると俄然がぜん紫電一閃しでんいっせんたちまち足元があかるなった、おどろいて見ると丸太ほどの火柱が、光りを放って空中へ上る事、幾百メートルとも、測量の出来ぬくらいである
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
三十計りの男と十五位な娘とが頻にやいていたが、おどろい戸外そとの方を向いた。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
月が有るからすかして見るとおどろいた、白糸縅しらいとおどしよろい鍬形打くわがたうちたるかぶといただき、大太刀をび手に十文字のやりげ容貌堂々威風凜々いふうりんりんたる武者である、某はあまり意外なものに出会い呆然ぼうぜんとして見詰みつめているうち
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)