首枷くびかせ)” の例文
平陽へいようれいを勤めていた朱鑠しゅれきという人は、その性質甚だ残忍で、罪人を苦しめるために特に厚い首枷くびかせや太い棒を作らせたという位である。
李万りまん張千ちょうせんも仰天して、宋江の首枷くびかせなどは手にかかえ、窓を破ってころげ出した。あとはしばらく無我夢中といっていい三つの影。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
グレ さうよなァ、頸根くびねは、ろうなら、頸輪コラー首枷くびかせ)からッこいてゐるがよいてや。(罪人にはならぬがよいてや)。
首枷くびかせ、赤い上衣、足の鎖、疲労、監房、組み立て寝台、その他覚えのあるあらゆる恐ろしいもの! しかもこの年になって
この場合わが身一つの外に、三界さんがい首枷くびかせというもののないことは、誠にこの上もない幸福だと思わなければならない。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ようやく苦難の首枷くびかせをはずすことが許される瞬間ほど、彼はおのれの生活の嫌悪けんおと絶望とに、孤独の感情に、ひどく圧倒されることはかつてなかった。
その貴婦人はやはり前に見たごとく三尺四方の厚い首枷くびかせめられて居る。その首枷が柔弱かよわい貴婦人の肩を押え付けていかにも苦しそうに見えて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かれらはうけたまわって立ち去ったが、やがて喬生と麗卿と金蓮の三人に手枷てかせ首枷くびかせをかけて引っ立てて来た。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
子と云う首枷くびかせを担ってなるものか、そんな料簡を起すと云うのは腑甲斐ないにも程があると、自分で自分の心を耻じしめて、それから申しますようは、よくもお詠みになりました
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
また彼らの好きな袖の下をたんまり握らせ、そのあいだ囚人めしゅうどの雷横を、そっと裏の雑木林へつれて行き、手鎖てぐさりを解き首枷くびかせはずしてやった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは長いじょうぶな鎖で、二ピエおきに他の短い鎖がついていて、その先端に四角な首枷くびかせが取りつけてある。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
その苦しい中でこの首枷くびかせを掛けられてそうして道端の石の上に晒されて居るという。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
やがて喬生と麗卿と金蓮の三人に手枷てかせ首枷くびかせをかけて引っ立てて来て、さらに道人の指図にしたがい、むちしもとでさんざんに打ちつづけたので、三人は惣身に血をながして苦しみ叫びました。
「たしかに、その首枷くびかせ野郎と端公たんこうの三人づれは、こっちの方角へ逃げたと途々みちみち聞いたんだ、兄貴にも知らせて、取ッ捕まえずにおくものか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方ではもっとも目の利く連中が、背の低いでっぷりした老人である監視長の見る前で、鉄の首枷くびかせを一つ一つ検査し、つぎにそれを火花の出るほど敷石の上にたたきつけてためした。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
背を打たせること二十じょうの後、首枷くびかせ手枷てかせをかけて獄屋につながせ、明日かれを殺すことにしていると、その夜のうちに劉は消えるように逃げ去って、誰もそのゆくえを知ることが出来ませんでした。
「なんの、こんな老いぼれ一匹、犬を斬るも同じことだ。いずれ孫策が成敗する。きょうは首枷くびかせをかけて獄に下しておけ」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主君の命令に、典獄頭てんごくのかみは、顔色を変えたが、やがて獄中からひき出した道士を見ると、首枷くびかせがかけてない。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——首枷くびかせをかけて獄中にほうりこんでおけ。凱旋ののちきっと罪を正すであろう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、その首枷くびかせを解いて与えた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)