けは)” の例文
旧字:
今度はその手錠をほどいて麻縄で縛つてみると、三郎は以前と同じやうに手首を振つてゐたが、急にけはしい眼附めつきになつて
「あなたは妾に信頼して下さらない。」と細い声で云つてきつと口をつぐんだ。道助は少しけはしい眼つきをした。
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
けはしい道ぢや。深い谷が左右に見える。恐しい娑婆ぢやなう。それをふびんぢや気の毒ぢやと思召して、罪業の深い我々凡夫をお救ひ下さると云ふのが阿弥陀如来の本願ぢや。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
彼は例の荒い皺を、あの晩のやうに深くけはしくはなく、ゆるめて、そのために一層老人臭い顔になりながら会釈ゑしやくをした。そして、一度は手にできた皮膚病を診てもらひに房一のところに来さへした。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
日は暑しのぼりけはしき坂なかば築石垣つきいしがきのこほろぎのこゑ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日毎ひごとにこころのみけはしくなれる七八月ななやつきかな。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「誰が?」と云ふ湯村の声はけはしかつた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
深くけはしくなつてゆくことを。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
高光る 日嗣ひつぎ皇子みこ 厩戸うまやどの ひじりおほぎみ けはし世に れましまして はらからと たのおみらが 由々しくも 惑へるなかに いかさまに 嘆きませるか かしこくも 斑鳩の里 うち日さす 宮居みやいさだめて 飛ぶ鳥の 明日香あすかのみ代ゆ あかつきの 道うちひらくと 夢殿に ひとりこもらせ 夕されば のりのきはみを
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
おほかたはけはしきかた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
けはしけれども近き夢。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)