陸尺ろくしゃく)” の例文
と、供頭が、陸尺ろくしゃくを、叱りつけて、棒鼻を叩いた。駕は人々と一緒に走り出した。足音と、叫び声とが、高く、渦巻いた時、将曹が
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
陸尺ろくしゃくの一人が草履を取って入って来た。さだは式台へおりた。すると小五郎が刀を抜いたので、陸尺は吃驚して外へとびだした。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「もとはみんなお陸尺ろくしゃくのがえん者なんですが、ああして見ると立派な兵隊さんでござんすねえ、馬子にも衣裳とはよく言ったもので——」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「冗談じゃありませんよ、親分。二年前に死んだ人間が人を殺したんだ。小石川の陸尺ろくしゃく町から一足飛びに飛んで来ましたぜ」
いつのまにか敏捷びんしょうに借り出してきたとみえて、棒はなをそろえながら待っていたのは、お陸尺ろくしゃくつきのお屋敷駕籠かごが二丁——。
危い弥生をみとめて、走りざまに陸尺ろくしゃくのひとりが片手にきこみ、むりやりに駕籠の一つへでも押しこんだものであろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
陸尺ろくしゃく四人も立ちすくんだ。手代り四人も茫然とした。持槍、薙刀なぎなた、台笠、立傘、挟箱、用長持ようながもち、引馬までが動揺して、混乱せずにはいられなかった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「あたりまえさ。この暑さじゃあ、大抵の者はうだってしまわあね。どうでこんな時に口をあいて見ているのは、田舎者か、勤番者きんばんもの陸尺ろくしゃくぐらいの者さ」
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なかなか結構な仕立ての駕籠の、土部家の客用乗物に相違ないが、陸尺ろくしゃくが二人でかいているだけで、供はない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
なすこともなく方々の中間部屋でとぐろを巻いて陸尺ろくしゃく馬丁べっとうなどというてあいとばかり交際つきあっているので、叔父の庄兵衛がもてあまし、甲府勤番の株を買ってやったが、なにしろ
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
縄取なわとりの与力は、山本左右太。控え同心には、今夜の宿直の岡弥一郎、桜間勘八、狩野右馬吉、石原十蔵、舟崎曾兵衛そうべえの五人が詰め、白洲木戸には、陸尺ろくしゃくたちの影が大勢見られた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四五人、屋根伝いに、裏の方に降りると、道具番の清七が、小屋の鍵をあけて、雁爪、スコップ、陸尺ろくしゃく棒、などを取りだした。それを、また、裏から、二階にあげた。武器である。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
あの通り陸尺ろくしゃくどもは只の下郎、御案内いたすものはこの手前ひとり、計るなぞとそのような悪企み毛頭ござりませぬ。
陸尺ろくしゃく町の成瀬屋へ行ったのは、もう昼近いころ、検屍けんし万端済んでしまって、おとむらいの仕度に忙しい有様でした。
江戸の町では見かけない山駕籠ふうの粗末なつくりだが、陸尺ろくしゃくは肩のそろった屈強なのがずらりと並んでいて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
陸尺ろくしゃくや巡礼などの休みたがる、構えの大きいわりに、くすぶった、軒には菱形ひしがたの煙草の看板がつるされ、一枚立てきられた腰高障子には大きな蝋燭ろうそくの絵がある茶店の中に
「お陸尺ろくしゃく御苦労になりましたが、これからさきは、このお方と、ぶらぶら歩いて見るつもり、御酒をいただきすぎたので、そのほうが酔がさめてよいだろうと思いますから——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
陸尺ろくしゃくどもは額の汗をく間もなしにその乗物を喧嘩のまん中に卸すと、袴の股立ちをい取った二人の若党がその左右に引添うて立った。「しばらく、しばらく」と、若党どもは叫んだ。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その頃はことの外繁昌はんじょうした目黒の不動ですが、朝の事で境内には女乗物がたった一つ、深々と扉を引いて、陸尺ろくしゃくが二人、石畳の上に踞んで煙草を吸んで居ります。
「まず代脈がひとり、それから書生がふたり、下男がひとり、陸尺ろくしゃくがふたり、それに女中がふたり」
そうか、おせい様はな、駒形こまがた猿屋町さるやちょう陸尺ろくしゃく屋敷のとなりにあった、雑賀屋さいがやと申した小間物問屋の後家なのだ。いまは、 下谷同朋町したやどうぼうちょうの拝領町屋まちやに、女だけの住まいをかまえておる。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これもけげんそうに帰ったあとから、陸尺ろくしゃくたちがふたり現われました。ふん、といったきり、ききもしないのです。入れ違いにあがってきたのは、ふたりの女中でした。
こん看板に梵天帯ぼんてんおびのお陸尺ろくしゃくが、せまい路地いっぱいに、いばり返って控えている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
平次とガラッ八は、そのまま小石川陸尺ろくしゃく町まで飛びました。
供の陸尺ろくしゃくたちが叫んだまえに、主水之介の身体はさッともうおどり出して仁王立ち、ぴたりと駕籠に身をよせながら、見すかすと、槍、槍、槍、四方、八方、槍ばかりです。
寺駕籠のお陸尺ろくしゃくにも似合わないで、もう歯の根も合わずにがたがたと震えているお供の者をしかり飛ばしながら、急いで木の下へかけつけると、ようやくさげてきた寺駕籠をふみ台にして
陸尺ろくしゃく共が言いもよったのを御門番の番士が慌てながら引き取って言いました。
「お陸尺ろくしゃく! お屋敷へ!」