長城ちょうじょう)” の例文
かん武帝ぶていが常に匈奴に苦しめられ、始皇しこうが六国を亡ぼしても北部の蕃族、即ち匈奴を防ぐがために万里ばんり長城ちょうじょうを築くという有様であった。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
つき四月とたつに従って、島全体を取囲んで、丁度万里ばんり長城ちょうじょうの様な異様な土塀が出来、内部には、池あり、河あり、丘あり、谷あり、そして
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
『マア聞き給え。その青い壁が何処どこまで続いているのか解らない。万里ばんり長城ちょうじょう二重ふたえにして、青く塗った様なもんだね』
火星の芝居 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
何でも長城ちょうじょうから哈爾賓ハルピンを越えると爆薬ハッパの値段が二倍になる。露西亜境の黒龍江こくりゅうこうを渡ると四倍になるんだそうですが、これは拳銃ピストルでも何でも、禁制品やかましいものはミンナ同じ事でしょう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
讃州さんしゅう丸亀まるがめ京極きょうごく阿波あわ徳島とくしま蜂須賀はちすか、姫路の本多、伊予の松平など、海には兵船をつらね、国境には人数を繰出くりだし、この赤穂領を長城ちょうじょうの壁のように囲んで、やじり砲筒つつを御家中へ向けている
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも「順天時報」の記者は当日の午後八時前後、黄塵に煙った月明りの中に帽子ぼうしをかぶらぬ男が一人、万里ばんり長城ちょうじょうを見るのに名高い八達嶺下はったつれいかの鉄道線路を走って行ったことを報じている。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
少しへだたった所に、誰かの大きなおやしきがあって、万里ばんり長城ちょうじょうみたいにいかめしい土塀どべいや、母屋おもや大鳥おおとりの羽根をひろげた様に見える立派な屋根や、その横手にある白い大きな土蔵なんかが、日にてらされて
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)