がね)” の例文
旧字:
武蔵の杖にも、のべがねがかくしてあったし、後先には、銅金どうがねが付いていた。そして紙捻で作った緒を通して腕貫うでぬきとしていたそうである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神州を守るくろがねのうきしろは、へさきに白く波をけり、わが無敵の『富士』は、翼をひろげて、凱旋の羽ばたきをするのである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
赤熱しゃくねつの鉄砂が蛍のように飛び散ると、荘厳そうごん神のごときおももちの孫六が、延べがねを眼前にかざして刃筋をにらむ……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、磁力砲をうったこっちが、あべこべに真赤ながねをおしつけられたように、急に機体が熱くなって、ぶすぶすと燃えだすさわぎです。どうも変です
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お隅はこの三人を格子戸口に待たせて置き、下女に言いつけてひうち石とひうちがねとを台所から取り寄せ、切り火を打ちかけるまでは半蔵らを家に入れなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
車内に入ってめきり、火打石と火打がねとで打ち出した火花を藁からほどよく離しておけば、かなり安全にかつ容易に(うまくゆけば)五分間で明りをつけることが出来たからである。
焼きがねよはやるひづめに蹄鉄かねうつとくるぶしも火もて焼きそね
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
着物をぬぐと、百は、そのあらがねみたいな、黒い、たくましい体を、風呂桶へいっぱいに沈めて
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宋江は耳朶じだの辺に、じんとつちがねを打たれたような鈍痛を感じた。ぐらとしてくる。下袴したばかまをはくのも帯を締めたのも夢中だった。両手で扉を突くやいな、どどどと階段を降りて行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)