釣台つりだい)” の例文
旧字:釣臺
東京へ戻ってもすぐ自分の家の門はくぐらずに釣台つりだいに乗ったまま、また当時の病院に落ちつく運命になろうとはなおさら思いがけなかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
から風邪かぜをひいてたちま腸窒扶斯ちやうチブスになつたのだとふ医者の説明をそのまゝ語つて、泣きながら釣台つりだいあとについて行つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「……なにか御祝儀でもありましたろう、おりあしく、榊原のお徒士かち衆が油単ゆたんをかけた釣台つりだいをかついで門から出てまいりまして……それで……」
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「左様でござんす、お馬やら釣台つりだいやら、あとからあの通り続いて参りますが、なんでも御旧家のこと故、すっかり古式でやるのだそうでござんす」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
声を揚げて人を呼ぶ気力もうない。折よく連の人が来たので、自分の容態を話し、とても人力には乗れぬから釣台つりだいを周旋してくれまいかと頼んだ。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
「町内の十一屋といちやに頼みました。駕籠や釣台つりだいじゃ面白くないから、古風に飾り馬にしようという話で——」
急報に接して飛んで往った次郎さんの阿爺おとっさんも、に合わなかったそうである。夜にかけて釣台つりだいにのせて連れて来て、組合中くみあいじゅう都合つごう今日きょう葬式そうしきをすると云うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「あの犬は釣台つりだいのあとからついて行った。首をれてときどきたんかにとび上がった。下にいろと言われると、犬はなんだかおそろしい声でうなったり、ほえたりした」
深川の材木問屋春木屋はるきやの主人治兵衛じへえが、死んだ女房の追善ついぜんに、檀那寺だんなでらなる谷中やなか清養寺せいようじの本堂を修理し、その費用三千両を釣台つりだいに載せて、木場きばから谷中まで送ることになりました。
おいの長吉が釣台つりだいで、今しも本所の避病院ひびょういんに送られようというさわぎ最中さいちゅうである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
をひ長吉ちやうきち釣台つりだいで、今しも本所ほんじよ避病院ひびやうゐんに送られやうとさわぎ最中さいちゆうである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)