遮莫さもあらばあれ)” の例文
遮莫さもあらばあれ、物に執着するはかれらの最も潔しとせぬところ、さればぞ初袷の二日三日を一年の栄えとして、さて遂には裸一貫の気安い夏をも送るのである。
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
遮莫さもあらばあれ斎藤緑雨さいとうりよくうかの縦横の才を蔵しながら、句は遂に沿門※黒えんもんさくこくはい軒輊けんちなかりしこそ不思議なれ。(二月四日)
遮莫さもあらばあれ永い年月としつき行路難こうろだん遮莫さもあらばあれ末期まつご十字架のくるしみ、翁は一切いっさいを終えて故郷ふるさとに帰ったのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
遮莫さもあらばあれ、乱歩が還暦の祝いを喜び楽しむのは、近来甚だしく賑やかなことが好きになり、腹の底では、文士劇の一幕でも出して、河内山宗俊でもやりたいという気持があるのかも知れない。
乱歩分析 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
遮莫さもあらばあれ、わがルーソー、ボルテイアのはいに欺かれ了らず、又た新聞紙々面大の小天地に翺翔かうしやうして、局促たる政治界の傀儡子くわいらいしとなりをはることもなく、おの夙昔しゆくせきの不平は転じて限りなき満足となり
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
師をうやまひ弟子をかなしむ遮莫さもあらばあれほかならぬかもよ男女なんによてふもの
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「戀」の供奉ぐぶにかづけの纏頭はなと贈らむも、よし遮莫さもあらばあれ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
遮莫さもあらばあれ我徒は病弱を救ひ、貧窶ひんるを恵むことを任にしたい」と勇ましい信念を披露ひろうしてゐる。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
遮莫さもあらばあれ這個しゃこの風流も梅の清楚なるを愛すればのこと、桜の麗にしてけんなるに至ては人これに酔狂すれどもまた即興の句にも及ばず、上野の彼岸桜に始まって、やがて心も向島に幾日の賑いを見せ
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
「恋」の供奉ぐぶにかづけの纏頭はなと贈らむも、よし遮莫さもあらばあれ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ブウシエをわらつて俗漢とす。あにあへて難しとせんや。遮莫さもあらばあれ千年ののち、天下靡然びぜんとしてブウシエのけんおもむく事無しと云ふ可らず。白眼はくがん当世におごり、長嘯ちやうせう後代を待つ、またこれ鬼窟裡きくつりの生計のみ。