たま)” の例文
それから数年の後に国外の学者によってその若い学士によって予測された現象の実在が証明されたというようなこともたまにはあるようである。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
即ち運動及び多は(吾々の言葉で云えば)ただ弁証法的にしか把握出来ないことをたま々裏から告げているのである。
辞典 (新字新仮名) / 戸坂潤(著)
「華族さんのお客さんがあるやろ」と訊くと、「ほら、うちかて芸者だす。たまには華族はんも呼んで呉れはります」ちゅう返事で、一向らちが開きまへん。
「ハア吾々なんざア駄賃取りでもしてたま一盃いっぱいやるより外に楽しみもないんですからな。民子さん、いやに見せつけますね。あんまり罪ですぜ。アハハハハハ」
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ついにはお客をすることも出来ません、たまにお客があれば機繰からくり身上しんしょうゆえ、客から預かる荷物を質入しちいれにしたり、借財方に持ってかれますような事でございますから、客がぱったり来ません。
待程に漸々やう/\にして十六七の下女立出此方こなたへ御通りなされと言にぞお菊は悦びあとついて通るに勝手のわきなる一間へいざなひ今に御新造樣お逢なるべしと云おき立去たちさりしが茶一ツ出さず小半時ばかり立て漸々やう/\此家の女房お粂立出て偖々さて/\めづらしやたまの御出に折惡をりあしく取込にて大に御待せ申せしと言ばお菊は莞爾につこと笑ひ否々いへ/\私しこそ御いそがしき中へ參り御ひま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それでも永い間の顔馴染かおなじみになってみれば、やはりそれだけの心安さは出来た。外に客の居ない時などには、たまには世間話の一つもする事はあった。
雑記(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たまに晴間を見せて、薄日が射すと、かえってあたりは醜くなる。太陽の輝く都会は僕にとっては余りにどぎつい。