逮捕たいほ)” の例文
お妙は、どう考えても、はなしともない喬之助であったが、愛すれば愛するだけに、逮捕たいほの危険にさらしておきたくないのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一切は大賀一味の逮捕たいほと、露顕ろけんによって齟齬そごしてしまった。のみならず、甲軍の方策は、早くも徳川方に読み抜かれてしまったわけである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はならずして無罪を宣告せられたが、逮捕たいほの理由は彼がある嫌疑者けんぎしゃに数千のかねを与えたというにあって、裁判官が
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
明智さんの手引きで、ぼくの署のものが、しゅびよく逮捕たいほしたのです。あなたがたも早くあちらへ行ってください……。ぼくはこのぬけ穴の検分をおおせつかったのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それを発見した夜警中の守衛しゅえいは単身彼等を逮捕たいほしようとした。ところがはげしい格闘かくとうの末、あべこべに海へほうりこまれた。守衛はねずみになりながら、やっと岸へい上った。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「かならず逮捕たいほしてみせます。この町にはいってきたら、こんどこそ逃がしはしない」
「まあ待て、きみに一つ重大な注意をあたえる。きみを作った針目博士はちゃんと生きているぞ。博士はきみを逮捕たいほするために、一生けんめい用意をととのえている。それを知っているか」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
逃亡した提轄ていかつ魯達にたいしては、天下の随所ずいしょ、いついかなる土地なりと、見つけ次第に逮捕たいほ処分構いなし、の令が出された。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年の若い巡査は警部が去ると、大仰おおぎょうに天を仰ぎながら、長々ながなが浩歎こうたん独白どくはくを述べた。何でもその意味は長いあいだ、ピストル強盗をつけ廻しているが、逮捕たいほ出来ないとか云うのだった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、表面はそれで済んでいるが、内実、山城守のいのちは、兇刃神尾喬之助の逮捕たいほ一つにかかっているのだ。つまり、早晩必ず喬之助を捕まえるからというので、切腹を延ばされているのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
X号は、機械人間たちを呼びだして、山形警部逮捕たいほの命令を出した。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ごもっともな意見いけんです。その方針ほうしんで、かならず逮捕たいほしてみせます」
「……そんなわけか」と、いまは逮捕たいほに出る気力も、満面の怒りも、俄にすうっと体から抜けてしまった感を自身どうしようもないていだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
チユウヤの陰謀は五十年間秘密に計画されたのち、とうとう、チユウヤの失策しつさくのために、露顕ろけんすることになつた。そして政府は、チユウヤ並びにジオシツを逮捕たいほせよといふ命令を出した。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
警察力のすべてをあげて怪魔かいま追跡ついせき逮捕たいほにとりかかった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「かならず逮捕たいほしてみせます」
かれは、所司代への密使をかねて、江戸南町奉行所の命をうけ、お綱の人相書を携えてその逮捕たいほに上方へ来た、敏腕の与力、中西弥惣兵衛なかにしやそべえである。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただちに、閣下から都のさい大臣へ、お飛脚は飛ぶし、また済州さいしゅう奉行所へも、賊徒逮捕たいほの厳令が下ッてくるに相違ない
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逮捕たいほの令をうけて、世をしのんでいる身ではないのか。白昼、しかも、靫負庁へ、自分で行くとは」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)