足調あしどり)” の例文
山内は顔を真赤まつかにして会釈して、不即不離つかずはなれずの間隔をとつて、いかにも窮屈らしい足調あしどりで、十間許り前方まへをチヨコ/\と歩いた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
低い口笛を吹き吹きそつとくちづけの真似をしたり横向きに白い肌をみせびらかして私等の足調あしどりを乱す気なのか、えたいの知れない蛇のやうな妖術者
這麽事を出任せに口走つて見て、渠はヒョクリと立ち上り、杉の根方を彼方此方、態と興奮した樣な足調あしどりで歩き出した。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
這麽こんな事を出任せに口走つて見て、渠はヒヨクリと立上り、杉の根方を彼方此方あちらこちらわざと興奮した様な足調あしどりで歩き出した。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大跨に、うだ、菊池君は普通の足調あしどりでなく、屹度大跨に歩く人だ。無雜作に大跨に歩く人だ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
声の在所ありかもとむる如く、キヨロ/\と落着かぬ様に目を働かせて、径もなき木蔭地こさぢの湿りを、智恵子は樹々の間を其方そなたに抜け此方こなたに潜る。夢見る人の足調あしどりとは是であらう。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大跨に、然うだ、菊池君は普通なみ足調あしどりでなく、屹度きつと大跨に歩く人だ。無雑作に大跨に歩く人だ。大跨に歩くから、時としてドブリと泥濘ぬかるみへ入る、石につまづく、真暗な晩には溝にもおつこちる。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
色沢いろつやの悪い顔を、土埃ほこりと汗に汚なくして、小い竹行李二箇ふたつ前後まへうしろに肩に掛け、紺絣こんがすり単衣ひとへの裾を高々と端折り、重い物でも曳擦る様な足調あしどりで、松太郎が初めて南の方からこの村に入つたのは
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼の頭脳あたまを支配してゐる、種々いろいろ形象かたちと種々の色彩の混雑こんがらがつた様な、何がなしに気を焦立せる重い圧迫も、彼の老ゆることなき空の色に吸ひ取られた様で、彼は宛然さながら二十はたち前後の青年の様な足調あしどり
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)