足枷あしかせ)” の例文
一郎に狂人制御せいぎょ用袖無しシャツを着せ、足枷あしかせを加えて七号室に監禁する一方、被害者シノ以下四名の男女患者に応急の手当をほどこしたが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分の生命を削らずに、生きて行くことは出来ないのだ。「そうだ、どうすれば、この邪魔になる重い足枷あしかせを断ち切ることが出来るか!」
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
この際、彼の取るべき方法は、妻のお民と共に継母をなだめて、目に見えない手枷てかせ足枷あしかせから娘を救い出すのほかはなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
エチオピアで同様の場合に貸し方と借り方二人の片脚を足枷あしかせで縛り合せて不自由させるという話と似ていて可笑しい。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのそばを通りかかると、時おり鎖の鳴る音や、足枷あしかせをはめられた人たちの呻き声が、聞えることもありました。
そこでは若いお孃さんたちが足枷あしかせをはめ、背中に板をつけさせられ非常に上品じやうひん几帳面きちやうめんでなければならないところだと、ベシーが時々話したものである。
足枷あしかせをおもわせる赤い豚革の編上靴あみあげぐつが、まるで彼を風に吹き飛ばされないためのおもりのようにならんでいた。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
わが身が手枷てかせ足枷あしかせのじゃまとなって、どれだけ栄三郎さまのおはたらきをそいでいることか……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
鎧と体とが離れ/″\になって、しっくり身についていないのみか、己れをまもり人を威嚇する筈の武具が、却って彼自身に無限の苦しみを与えるところの足枷あしかせ手枷のように見える。
一兵一の蓄えもなく、居候をしている素寒貧すかんぴん若公卿わかくげには、どんな過激な議論も吐けようけれど、重喜には、譜代ふだいの臣、阿波二十五万石の足枷あしかせがある。そう、滅多に動けたものではない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のた打ち廻り、重い足枷あしかせを引き擦り引き擦り、大叫喚をしているのであろう、油紙の天幕の下は、朽木の体内のように脆くて、このまま人間は、生きながらしかばねとなるのではあるまいかと、思われた。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ただ手錠、足枷あしかせめて晒して居る者もあるがこの時は大変に晒されて居るのを見たです。およそ二十人ばかりも彼方かなたの辻、こなたの柱に一人ずつ晒されて居った。いずれも立派な着物を被て居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
罰する足枷あしかせ——それらにまんべんなく感心してしまうと
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
認識者たちは、仕方なしに、重い足枷あしかせきずって歩く。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
手枷てかせ足枷あしかせ團子だんごにされて
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
何故ならこの接吻は、私の足枷あしかせされた封印のやうに思はれたから。その後も、彼はこの儀禮を略さなかつた。
うなじに吊すように、ふん縛られ、足は大きな足枷あしかせで錠をかけられていながら、真中の洋車ヤンチョにふんぞりかえって、俥夫と、保安隊士を等分に呶鳴りつけていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
幾時代かの伝習はその抗しがたい手枷てかせ足枷あしかせで女をとらえた。そして、この国の女を変えた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで降蔵らは本正寺に呼び出され、門前で足枷あしかせを解かれ、一同書付を読み聞かせられた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
手枷てかせ足枷あしかせがそこに降蔵らを待っていたのだった……
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)