贅言ぜいげん)” の例文
私は今ルクレチウスを紹介せんとするに当たってまずこの点に誤解のないように、わざわざ贅言ぜいげんを費やす必要を感じる。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
くるに従って冷えまさる夜気が、自ら嚔をさそったのであるということは、余情の範囲として贅言ぜいげんを要せぬであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
これは贅言ぜいげんを費す迄もなく、その武器の優劣と言う点から言えば、手裏剣よりも短銃に七分の利がある筈でした。
女房は余計な口さえ出さなければ、書生さんに持って往ってもらうのに、と、夫の贅言ぜいげん小面憎こづらにくかった。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この山に就ては『山岳』第十年第三号に高頭君の詳細なる記文と撮影の写真とが載っているから、ここ贅言ぜいげんを要しない訳であるが、私の所見をも少し附け加えたいと思う。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それに、ルチアノやフローが乗っているかどうかは知らないが……とにかく、この二探検船の前途になに事かが起るということは、もうここで贅言ぜいげんを費やすまでもないだろう。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
『大検使たる此方このほうが、差つかえなしと申すからには、無用な贅言ぜいげん、お控えなさい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一言贅言ぜいげんさしはさませて下さるならば、読者も御承知のとおり浄土宗の総本山巨刹きょさつ増×寺は、今より二十八年前の明治四十二年三月二日の夜半、風もなく火の気もなき黒本尊より突如怪火を発し
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
絵画、漆器に関しては彼らの尽くした莫大ばくだいの貢献についていうのはほとんど贅言ぜいげんと思われる。絵画の一大派はその源を、茶人であり同時にまた塗師ぬし、陶器師として有名な本阿弥光悦ほんあみこうえつに発している。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
作後贅言ぜいげん
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
武門ぶもん氏神うぢがみあがめ奉つる事世の人の皆知る處なれば爰に贅言ぜいげんせず因て當時將軍家より社領しやりやう一萬石御寄進きしんありかゝる目出度御神なれば例年八月十五日御祭禮のせつ放生會はうじやうゑの御儀式ぎしきあり近國きんごく近在きんざいより其日參詣なす者數萬人及び八幡山崎淀一口其近邊は群集ぐんじゆ一方ならずよどの城主稻葉丹後守殿より毎年まいねん道普請みちぶしん等丈夫に申付られ當日は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
科学上ではなんらかの画紀元的の進展を与えた新しい観念や学説がほとんど皆すぐれた頭脳の直観に基づくものであるという事は今さらに贅言ぜいげんを要しない事であるにかかわらず
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いかにも眼八には、これ以上の贅言ぜいげんをきく必要がない。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)