貴所方あなたがた)” の例文
貴所方あなたがたは」と糸子を差し置いて藤尾ふじおが振り返る。黒い髪の陰からさっと白い顔がす。頬の端は遠い火光ひかりを受けてほの赤い。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
村「はい、有難う存じます、どうぞおふくろの方さえい様にして下されば、折角の御親切でございますから、私の身の上は貴所方あなたがたにお任せ申します」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
基督のことは今ま歌を歌ひなされた、大和先生から段々御聞きなさい、わたしが差当り一つ御話して置くのは、——貴所方あなたがたが忘れない様に聞いておいて頂きたいのは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「然し思つた程でもないものです。若し冬になつて如何どうしても辛棒が出来さうもなかつたら、貴所方あなたがたのことだから札幌へ逃げて来れば可いですよ。どうせ冬籠ふゆごもりは何処でしても同じことだから。」
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
お救い下さいまして有難う存じます、只今貴所方あなたがたより此の船は新潟ゆきと承わって、びっくりするほど喜びました、此の上の御親切にうか私を新潟までお連れ下さいまし
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
貴所等あなたがたわたしとは長く御近所に住つて居りますが、今まで仲よく一所に遊ぶ様な機会をりがありませんでした、今晩はくこそ来て下さいました、——今晩貴所方あなたがたをおよび申したのは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
誠にわたくしがあやまった、誠にどうも相済みません、わたくし取上とりのぼせていて貴所方あなたがたはお村の身請みうけをするお客と存じまして、とんでもない事を申しましたが、どうか御勘弁を願います
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
耶蘇基督イエスクリストと云ふお方の御誕生日を、御一所にお祝ひたさうと思つたからです、貴所方あなたがたみんな生れなすつた日がある、其日になると、阿父おとつさんや、阿母おつかさんが、今日は誰の誕生日だからと
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
もつとも外へ出ますと夜鷹蕎麦よたかそばでもなんでもありますから貴所方あなたがたのおあし御勝手ごかつて召上めしあがりまして。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
番「えゝ、今日こんにちうこそ御尊来ごそんらい有難い事で、貴所方あなたがたのお入来いでのございますのは実に主人も悦び居りまして、此の上ない冥加みょうが至極の儀で、土地の外聞で、わたくしにおいても、誠に有難いことで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どういう訳で私のとこへお出でなすって、人の娘をかどわかしたから名主へ届けるというのでがんす、其の次第を一通り承わった上で御挨拶を致しやすが、一体貴所方あなたがた何処どちらのお方でございやす
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)