讒者ざんしゃ)” の例文
「……ふム。……いや義助、とまれ讒者ざんしゃにとれば、わしが女色にょしょくに溺れているなどは、よい口実になるだろう。正成も言いかねぬ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
讒者ざんしゃの口にかかりでもしたら弁解の辞にさえ窮する次第、とそれで公然医者も呼べず、帰りの道中は謹慎の意味で駕籠から出なかったほどでござるよ。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この峠は大明神峠とも呼ばれている、尾瀬大(中?)納言が讒者ざんしゃのために流罪るざいとなって、此処ここを過ぎられた時に、大明神が現出されてみちに枝折をされたという伝説がある
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
愚僧が好い加減なうそを構えて、三成公を讒者ざんしゃにするのだと、仰っしゃるでもござりましょうが、かりそめにもお姫様ひいさまの御父君、愚僧に取りましても大恩のあるもとの御主人でござりますものを
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……が、そうした心の機微きびへつけ入って、ある事、ない事、努めてご兄弟が離反してゆくように、耳こすりする讒者ざんしゃもあるからまきに油です
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
定めし讒者ざんしゃの仕業であろうと仰っしゃって、お取り上げになりませなんだが、いや/\、そうとばかりは申せませぬ、思いあたる節もござりますから、先ずそれがしが密々に調べてみましょうと申されて
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「もし汝の武勇が秦朗に勝るものならば、司馬懿は讒者ざんしゃの言にあやまられたものできょくは彼にありといってよい。同時に、汝の言も信ずるに足りよう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところへ、讒者ざんしゃの画策も手伝うように、両者のあいだには種々いろいろな事件が頻発ひんぱつした。宿命といおうか不測に起ってくる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすがに、讒者ざんしゃはらを、観破したのかと思うと、そうでもない。いや、その反対だったのである。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なおなお、今日に至っても、この光圀を、讒者ざんしゃの弁のごときに惑わさるるものと、観ておるのか。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
非なりと認めている者はありません。すべては讒者ざんしゃの作り事です。そしてその讒訴にたぶらかされて、ありもせぬ幻影に悩まれておるのが、堂上の諸卿ではありますまいか
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
讒者ざんしゃは、弁をふるって、日頃から胸にたたんでおいた材料を、舌にまかせて並べたてた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鎌倉に監禁されている間、一夕酒の座にはべらせられ、梶原のドラ息子に、口説かれたりしたこともあるが、手強てごわねつけたばかりでなく、これを讒者ざんしゃの片割れと見て、面罵めんばしている。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに、讒者ざんしゃの言にさまたげられ、ついにその事なく薨去せられたが、その大葬のすむや否、わが曹植の君に、問罪の使いを向けてよこすとは何事だ。いったい曹丕そうひという君はそんな暗君なのか。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに答えて、師直もろなおは再度の使者を出し、「師直が本心は、君の御存知でないはずはない。讒者ざんしゃの張本ども一類をことごとく縄してお下げ渡しねがいたい」と、今は尊氏へ対してさえ傲岸ごうがん、引く色もない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
讒者ざんしゃの通有手段である。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
讒者ざんしゃ
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)