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あつらえむ
ふりがな文庫
“
誂向
(
あつらえむ
)” の例文
前日よりはずつと都合の好い、お
誂向
(
あつらえむ
)
きの天気で、空の一方には、綿の山かと思はれるやうな白雲がむく/\と湧き立つて居りました。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
勝負はこれから、まず腹をこしらえてからのこと、それには鼻の先へお
誂向
(
あつらえむ
)
きのこの鍋——これをひとつ御馳走にあずかっての上で……
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
格子のすき間から、棒縞の浴衣を思付いた君の着眼は、却々面白いには面白いですが、あまりお
誂向
(
あつらえむ
)
きすぎるじゃありませんか。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さあ、模様が
誂向
(
あつらえむ
)
きとなったろう——ところで、一番近い田圃へ出るには、是非、あの人が借りていた、その
商家
(
あきんどや
)
の前を通るんだったよ。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大した智恵のある男ではありませんが、眼と耳の良いことはガラッ八の
天稟
(
てんぴん
)
で、平次のためには、これほど
誂向
(
あつらえむ
)
きのワキ役はなかったのでした。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
『ここは
妖精
(
ようせい
)
の
見物
(
けんぶつ
)
には
誂向
(
あつらえむ
)
きの
場所
(
ばしょ
)
じゃ。
大
(
たい
)
ていの
種類
(
しゅるい
)
が
揃
(
そろ
)
って
居
(
い
)
るであろう。よく
気
(
き
)
をつけて
見
(
み
)
るがよい。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
この観察にして果して大過なしとせば、松陰の如きは、
豈
(
あ
)
に
誂向
(
あつらえむ
)
きの革命家にあらずや。彼は眼の人として横井、佐久間に譲り、手の人として大久保、木戸に譲る。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
背後は雑木林、前は
田圃
(
たんぼ
)
、西隣は墓地、東隣は若い頃彼自身遊んだ好人の
辰
(
たつ
)
爺
(
じい
)
さんの家、それから少し離れて居るので、云わば一つ家の石山の新家は
内証事
(
ないしょうごと
)
には
誂向
(
あつらえむ
)
きの場所だった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
別邸のことだから、広くもない庭だけれど、植込みが茂っているので、そこへ身を隠して立聞きをするにはお
誂向
(
あつらえむ
)
きであった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
こう言って、夜道を
緩々
(
ゆるゆる
)
と東の方へ立去る
両箇
(
ふたり
)
の旅人があるのを以て見れば、外は、やっぱり
誂向
(
あつらえむ
)
きのいい月夜に相違ない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その代り素ばらしいのを一名、こりゃ、華族で
盗賊
(
どろぼう
)
だと申しますから、味方には
誂向
(
あつらえむ
)
き、いざとなりゃ、船の一
艘
(
そう
)
ぐらい土蔵を開けて出来るんでござります。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「殺しはしない。安心し給え。ただちょっとの間、窮屈な思いをして
貰
(
もら
)
おうというのさ。この
家
(
うち
)
は、実にお
誂向
(
あつらえむ
)
きのカラクリ仕掛けになっているのでね」
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、また思い返してみると、それはあんまりお
誂向
(
あつらえむ
)
き過ぎる、そういう思いがけない人間が、この際、ひょっこりとここへ現われるなどは夢のようなものだ。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、それが大尽の耳ざわりになったのは、道庵先生にとっては
誂向
(
あつらえむ
)
きであったけれど、並んでいた人たちにとっては、身体を固くするほどの恐縮なのであります。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
賊の忍入るにはお
誂向
(
あつらえむ
)
きなんですが、その代りによくしたもので、殺された老主人が馬鹿に
眼敏
(
めざと
)
い男なので、滅多なこともなかろうと、皆安心していた訳なんです。
二癈人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雪見には
誂向
(
あつらえむ
)
きの一間で、前に言った躑躅ヶ崎の出鼻から左は高山につづき、右は甲府へ開けて、常ならば富士の山が呼べば答えるほどに見えるところであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
丸山勇仙は、浮かない仏頂寺を浮き立てるつもりで、自分がぐいぐいと
手酌
(
てじゃく
)
で盃を重ねながら、ようやく浮き立とうとつとめたが、気のせいか
誂向
(
あつらえむ
)
きに浮いて来ないらしい。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
墨汁そのものが、
誂向
(
あつらえむ
)
きに、この場へ出来て来さえすれば滞りはないことでありますが、次の問題は、しからばこの墨汁を、何に向って、何物を書こうの目的に供するかであります。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こんな仕事には
誂向
(
あつらえむ
)
きに出来ている男だ、何か、ちょっとした危ない仕事がやってみたくてたまらないのだ、
小才
(
こさい
)
が利いて、男ぶりもマンザラでないから、あれでなかなか
色師
(
いろし
)
でな
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ちょうど
誂向
(
あつらえむ
)
きにそういう掟が出来ているのですから、豪勢でしょう——そんなことはどうでもいいわ、手っとり早く、打明けてしまいましょう、実はねえ、宇津木さん、このお宝は
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この寝物語の里が
誂向
(
あつらえむ
)
きの地点になっていました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「有難い、
誂向
(
あつらえむ
)
きの品が全部そろっていた」
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「そう
誂向
(
あつらえむ
)
きのところがあればだがなあ」
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
誂
漢検1級
部首:⾔
13画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“誂”で始まる語句
誂
誂物
誂主
誂子
誂謗