角々かど/\)” の例文
星がきらめき出した。其の光は鋭く其の形は大きくて、象徴的しやうちようてきな絵で見る如く正しく五つの角々かど/\があり得るやうに思はれる。空は澄んで暗碧あんぺきの色は飽くまで濃い。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
空気洋燈らんぷ煌々くわう/\かゞやいて書棚の角々かど/\や、金文字入りのほんや、置時計や、水彩画の金縁きんぶちや、とうのソハにしいてある白狐びやくこ銀毛ぎんまうなどに反射して部屋は綺麗きれいで陽気である、銀之助はこれがすきである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
天陽てんやうはなれ降下ふりくだり地にかへれば天やうまろかたどりうせて地いんかくなる本形ほんけいかたどる、ゆゑに雪頽なだれは千も万も圭角かどだつ也。このなだれとけるはじめは角々かど/\まろくなる、これ陽火やうくわの日にてらさるゝゆゑ天のまろきによる也。
さう言つて学生に別れた岩村男は、控室に帰つて角々かど/\り切れたいつも紙挟ポートフオリオを小脇にはさむだと思ふと、直ぐ表通りへ飛び出した。そして物の二十分と経たぬに会堂わきの牛飯屋の店先に立つてゐた。