見所みどころ)” の例文
私の経験では、初がつおは鎌倉小坪こつぼ(漁師町)の浜に、小舟からわずかばかり揚がるそれを第一とする。その見所みどころは、今人と昔人と一致している。
いなせな縞の初鰹 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
『そう、重宝でもない。見所みどころのある者故、物置小屋を直して、鍛冶小屋に与えてはおるが、若いし、容貌はよし、天才肌な男なので、女に好かれて困る』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうすると娘がおとっさま実は孝助殿の男振にも姿にも惚れたのではございません、ほかたゞ一つの見所みどころがありますからとういいますから、何処どこに見所があると聞きますと
夫人は庭からべにと薄黄との薔薇ばらを摘んで来て「二三日前の風と雨で花が皆いたんで仕舞しまひました。これでも庭ぢゆうでの一番立派な花を切つたつもりですがんなに見所みどころがありません」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
バキチ、きさまもだめなやつだ、よくよくだめなやつなんだ。もう少し見所みどころがあると思ったのに牛につっかかれたくらいで職務しょくむわすれてげるなんてもう今日限きょうかぎ免官めんかんだ。すぐふくをぬげ。
バキチの仕事 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
芸者にしては見所みどころがある、心掛けのいい奴だと、あの人が感心するようだったら、そこは若ーさんもはらのすわった男だから、この先きお前はんのためにも悪いはずはないにきまっている。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それに私共にては、見所みどころのありそうな馬には、昔のおきて通り白轡しろくつわ五十日、差縄さしなわ五十日、直鞍すぐら五十日を馬鹿正直に守って仕込ませました故に、拍子ひょうしもわりあいによく出来ているつもりでござりまする
主筋のお声がかりゆえ、よんどころなくつかわさねばなどとお考えあそばさずに、その主筋のお方すら、仲に立って口をおきき遊ばす程、藤吉郎どのには、どこか見所みどころがあるのでございます。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間は朴直ぼくちょくであって、腕は、お前の秘蔵弟子だけに見所みどころのある男であったが、不意に行方知れずになった、手を尽して捜索したが、どうもわからぬ、あの辺の海は危険な海であるから、ことによると
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)