見度みた)” の例文
近頃日本に於ける一部の所謂いわゆる推理小説より、文学としてはより高等な段階にあるものではないかと、いささか自負しても見度みたくなるのである。
むしろ出来るけ隠して置こうとしていた。自分でも忘れようと努めていた。それが、今日はどうしたはずみか、ふと話して見度みたくなった。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
○彼女はじっとしてられなくなった。何かこころがっている。自分をためして見度みたがっている。自分の市場価値を。
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
弥之助は心ひそかに考えて居る、どうか自分は一つ、その農業の商業化でなく、農業の純農業の立場を行って見度みた
本屋は一刻も早くその「い物」が見度みたさにあとからいて甲板に出た。船の前にはつまんで投げたやうな島が幾つか転がつてゐる。蘆花君は一寸後を振向いて見て
隅「それはお前江戸で生れた者は江戸の結構は知っているから、江戸は見度みたいし懐かしいわね」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
昭和二年の早春、葉子は、一寸した病後の気持で、熱海の梅林が見度みたくなり、良人おっとと、新橋駅から汽車に乗った。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お前ばかり便たよりに思うのに、初めてじゃアなし、法蔵寺で逢って知って居るから、先刻さっきお前さんが白い綿帽子をかぶって居たが、田舎は堅いと思って、顔を見度みたいと思っても
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は、やつぱり孤独は孤独をくのか。そして一度、老婢とその少女とが店で対談する様子が見度みたくなつた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
山「有難い、それじゃア己に鹿の八の扮装なりを貸して呉れないか、穴掘に成ってお香剃の時仏様の顔を見度みたいのだが、馬鹿気ては居るが、友達の積りで連れて行っては呉れまいか」
「鈴ちゃん、また堀を覗いている。そんなに魚が見度みたかったら、水族館へでも行けば好いじゃないか。順ちゃんがね、また喘息ぜんそくを起したからお医者へ連れて行ってお呉れ」
晩春 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
然うだって、大層だってね、勘藏さんがねえ、あれもマア田舎へ行って結構な暮しをして、然うだって、前の川へけば顔も洗え鍋釜も洗えるってねえ、噂を聞いて何うか見度みたいと思って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
早く、墓地へ行って手紙見度みたいから近道行こうってんでしょう。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
○「一生のうち一度だけ、巴里パリは死ぬほど行って見度みたいわ。」
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いいえ、たった一人でセーヌ河口が見度みたいのですわ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
息子の手紙? 執念深く見度みたがるのね。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)