覆盆子いちご)” の例文
朝顔の苗、覆盆子いちごの苗、花も実もある中に、呼声の仰々しきが二ツありけり、曰く牡丹咲の蛇の目菊、曰くシヽデンキウモンなり
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
矢筈草はちよつと見たる時その葉よもぎに似たり。覆盆子いちごの如くそのくきつるのやうに延びてはびこる。四谷見附よつやみつけより赤坂喰違あかさかくいちがいの土手に沢山あり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
梨が一番いいという人もあれば、菓物は何でもくうが梨だけは厭やだという人もある。あるいは覆盆子いちごを好む人もあり葡萄をほめる人もある。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
この男の下郎にひどく煙草のやにが好きなのがあつて、ひまさへあると、色々いろんな人から煙管きせるやにを貰ひ集めて、それをわんに盛つて覆盆子いちごでも味はふやうに食べてゐた。
道のほとりに咲く草花、あからむ覆盆子いちごなどさすがになつかしくて根岸庵のあるじがり端書はがきをやる。
滝見の旅 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
果実にもももなし楊梅やまもも覆盆子いちご等、やわらかくて甘いものがいろいろあるが、なまで食べられる日は幾日いくにちもないから、年中いつでも出るのはほしてたくわえて置かれるものだけであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
○杏、林檎、覆盆子いちご、桃李の類は清涼性食物にて便通を促す。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
にまじり覆盆子いちご
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
梨に二十世紀、桃に白桃水蜜桃ができ、葡萄や覆盆子いちごに見事な改良種の現れたのは、いずれも大正以後であろう。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すると娘は急に真紅まつかになつた。覆盆子いちごのやうに真紅まつかになつて、眼には一杯涙さへさしぐむでゐる。
しかしまた一方からいうと、木の実というばかりでは、広い意味に取っても、覆盆子いちご葡萄ぶどうなどは這入らぬ。其処で木の実、草の実と並べていわねば完全せぬわけになる。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
麺麭パンにジヤムをつけて噛じるのもよい、また覆盆子いちご牛乳ミルクをぶつ掛けてすゝるのもよいが、それよりもずつと効力ききめがあるのは、羅馬字を普及させる事だと信じてゐる博士は、カルテは無論の事
覆盆子いちごを食いし事 明治廿四年六月の事であった。学校の試験も切迫して来るのでいよいよ脳が悪くなった。これでは試験も受けられぬというので試験の済まぬ内に余は帰国する事に定めた。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
覆盆子いちごのまみは耀かがやきぬ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
覆盆子いちごのまみは耀きぬ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)