西南にしみなみ)” の例文
正月の三日の晩です、この山の東の方から光ったものが出て、それが西南にしみなみの方角へ飛んだといいます。見たものは皆驚いたそうですよ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
診察室の西南にしみなみに新しく建て増した亜鉛葺トタンぶきの調剤室と、その向うに古いなつめの木の下に建ててある同じ亜鉛葺の車小屋との間の一坪ばかりの土地に
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
西南にしみなみだろう黒い雲をかすめて赤い金色きんいろの星が光る、流石さすがは昔からかしい大和国を吹く四月の夜の風だ、障子を開けて坐っていると、何時いつのまにか心地よく
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
そのうちにふゆけて、だんだんはるちかづいてまいりました。あるのこと、西南にしみなみそらのすそが、雲切くもぎれがして、そこから、なつかしいだいだいいろそらが、かおしていました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
道は少し北へ曲つて、長屋の間を行くこと半町ばかりにして火の見梯子の立つてゐる四辻に出る。このあたりを大音寺前と称へたのは、四辻の西南にしみなみの角に大音寺といふ浄土宗の寺があつたからである。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
強くはないが、方角のまらぬ風が折々吹くので、火は人家の立て込んでゐる西南にしみなみの方へひろがつて行く。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あのやまえて、西南にしみなみにどこまでも、したて、んでいきますと、しろ湯気ゆげがっている温泉おんせんがあります。そこへいって、はいれば、じきに、それくらいのきずはなおってしまいます。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
道は少し北へ曲って、長屋の間を行くこと半町ばかりにして梯子ばしごの立っている四辻に出る。このあたりを大音寺前ととなえたのは、四辻の西南にしみなみの角に大音寺という浄土宗の寺があったからである。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)