蜀黍もろこし)” の例文
「そんぢや、わし蜀黍もろこしかくしてとこ見出めつけあんすから、屹度きつとんにきまつてんだから」といふこゑあとにしてはたけ小徑こみちをうねりつゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
道の右側は並んだ人家の下の低い崖で、左側は勾配の緩い畑地であったが、其処には熟した麦があり蜀黍もろこしがあり、麻があり柿の木があった。
蟹の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
隣の人の業になら、どんな六つかしいことにでも、手を借すのは、此人です。祭の時に蜀黍もろこしさやを剥ぎ、石垣を築くとき、第一に力を出すのは、此人です。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
三、四日のうちに今年の秋も急にけて、畑の蜀黍もろこしもみな刈り取られてしまったので、そこらの野づらが果てしもなく遠く見渡された。千枝松は世界が俄に広くなったように思った。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いちはやく秋風のをやどすぞと長き葉めでて蜀黍もろこしは植う
樹木とその葉:22 秋風の音 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
月の前になびきそよめく黒き穂の蜀黍もろこしの穂の金色こんじきへり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蜀黍もろこし畑も
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
「さうなんでさ、わたしや蜀黍もろこし打棄うつちやときまでつとおもつてたらえねえんでさ、私等家わたしらぢのおとつつあは道具だうぐつちとひどおこんですから」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いちはやく秋風のをやどすぞと長き葉めでて蜀黍もろこしは植う
ほどならば何故なぜかれ蜀黍もろこしることをあへてしたのであつたらうか。かれれまでもはたけものつたのは一や二ではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)