藁人形わらにんぎょう)” の例文
これも近所の女たちがよってきて、一日のうちに機にかけて織って縫って、そのに着せたのち、それを藁人形わらにんぎょうに着せたまま川に流したりする。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どれだけ大きな強壮の身体を持って居りましてもそれは藁人形わらにんぎょうと同様で、独立心のない豪傑は人の奴隷となるだけです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
お向うのおみつさんなんざ半歳前あねが嫁に来た時は藁人形わらにんぎょうを持出す騒ぎをやりましたぜ。そいつを五寸釘でどこかの杉かなんかに打ち付けるつもりのを
「かねて正成の人となりは、そちからつぶさに聞いていた。その正成が、小城一つ失ったとて、やわか、むなしく焼け死ぬものか。藁人形わらにんぎょうではあるまいし」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とても何々女史のように一刀両断、バッタバッタと右に左に藁人形わらにんぎょうり倒すように行かない。
インチキ文学ボクメツ雑談 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そのうちに、大きな藁人形わらにんぎょうが二つ、群集の中に、こちらへ向けて、高く押立てられました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこには小さな藁人形わらにんぎょうが置いてあって、そのうしろの貼紙に「金蓮」と書いてあった。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
顳顬こめかみ即功紙そっこうし張りて茶碗酒引かける流儀は小唄こうたの一ツも知らねば出来ぬことなるべく、藁人形わらにんぎょうに釘打つうしときまいり白無垢しろむくの衣裳に三枚歯の足駄あしだなんぞ物費ものいりを惜しまぬ心掛すでに大時代おおじだいなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「パリーの子供がき藁人形わらにんぎょうじゃねえ。」とブリュジョンは言葉を添えた。
一例だが、寄手の猛攻が昼夜もなかった一ト頃には、よく藁人形わらにんぎょうを用いて、敵の矢をかせぎ取ッたものだった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠野郷には八ヶ所の観音堂あり。一木をもって作りしなり。この日報賽ほうさいの徒多く岡の上に灯火見え伏鉦ふせがねの音聞えたり。道ちがえのくさむらの中には雨風祭あめかぜまつり藁人形わらにんぎょうあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
藁人形わらにんぎょうにも劣った人物
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
片岡、堀部、神崎、その他の人々は、まだ、藁人形わらにんぎょうのように凝然として、大手御門下に立ちつくしていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「丞相のおことばには、其許そこもとたちへは、生きた兵をあずけてあるに、何故、藁人形わらにんぎょうの如き真似しておるかと、きついご不興である。一刻もご猶予はあるべからず」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村の者たちは、ふと、不愍ふびんを感じたが、先頃からの憤怒はまだ消え切れなかった。たちまち、麻縄を足して、彼の体を、二丈も空の梢へ引き揚げ、藁人形わらにんぎょうのように縛りつけて降りて来た。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)