薄雪うすゆき)” の例文
けれども、結局にはそれが禍いとなって、あろうことか正室薄雪うすゆきかたが、上方かみがた役者里虹と道ならぬつまを重ねたのである。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
薄雪うすゆきの樣に白い道を進んで日高に入ると、さすが馬産國だけに、親馬が通ると、そのあとへ必ず小馬がてく/\ついて行くのに出會ふことが多い。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
ひと半鉦ばんとほあかり、それゆめえて、あかつきしもきかさぬる灰色はひいろくもあたらしき障子しやうじあつす。ひとり南天なんてん色鳥いろどり音信おとづれを、まどるゝよ、とれば、ちら/\と薄雪うすゆき淡雪あはゆき
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はて、物々しい、と福村はそれに目を奪われて、いま包もうとする草紙をのぞいて見ると、上の一揃いは「常夏とこなつ草紙」、下のは「薄雪うすゆき物語」、どちらも馬琴物と見て取りました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
依ってこの地を薄雪うすゆき土用寒どようかんノ庄というたのが、ついに転じて碓氷郡豊岡村となった云々(行脚あんぎゃ随筆中)。この雪は何か特に六月も朔日の日に降るべき仔細があったのではないか。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)