ふき)” の例文
壁は荒壁で天井もなく、ふき降しの不細工な十坪内外の田舎造りではあったが、畳も敷き、雨戸も立てられ、ちょっと落ち着ける住居である。
長崎の鐘 (新字新仮名) / 永井隆(著)
それから竿さおのさきに穴のあいたものへなわをとおして、助手が下からさし出すのを、上にいるふきが取りあげて、それをもってかやわらを縫いぼくにむすびつけるのが
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
可なりの生活くらしをして居ながら、ぜにになると云えば、井浚いどざらえでも屋根ふきの手伝でも何でもする隣字となりあざの九右衛門じいさんは、此雹に畑を見舞みまわれ、失望し切って蒲団ふとんをかぶって寝てしもうた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新橋しんばし金春こんぱる屋敷に住んだ屋根ふきで、屋根屋三右衛門が通称である。もとしばの料理店鈴木すずきせがれ定次郎さだじろうで、屋根屋へは養子に来た。わかい時狂歌を作って網破損針金あみのはそんはりがねといっていたのが、後博渉はくしょうを以て聞えた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
されば——この屋根ふきは、至って、おとなしい人間でござりますが、なにか、仕事の上で、ちょっと口返しをしたというのが、相手のかんにさわったらしく、いきなり乱暴をしかけられ、足場から
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やねふきが我屋ねふくや夏の月 夕兆
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
「その相手も、屋根ふきか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)