“葡(は)” の例文
家の中を葡(は)ひずりまはり、土間にころげ落ち彼の足にとりつき、彼を「お父ちやん」と呼んだり、「お父う」と罵つたりする。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
さてそれから、チェリーは室内を葡(は)いまわって、魔薬(まやく)の入った煙草を探した。遂(つい)に煙草の隠匿(いんとく)場所がわかって、八本の特製のゴールデン・バットを手に入れた。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
参差(しんし)たる松(まつ)ヶ枝(え)、根に上(あが)り、横に葡(は)い、空にうねって、いうところの松籟般若(しょうらいはんにゃ)を弾ずるの神境(しんきょう)である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
武蔵相模の土に亙(わた)って逞(たくま)しい埋蔵力を持ちながら、葡(は)い松のように横に延びただけの旧家の一族に付いている家霊が、何一つ世間へ表現されないのをおやじは心魂に徹して歎(なげ)いていたのだ。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
高粱(カオリャン)の根を葡(は)う一匹の百足(むかで)。
雑信一束 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
進められるままに私は隆太郎と階下(した)の白い浴室にはいる。何かの蔓(つる)が葡(は)った窓から、覗くと蘆荻(ろてき)が見え、河面(かめん)が見える。白い浴槽の内では、そこで私が河童(かっぱ)の真似をする。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
そこにはかの女が随(つ)いて行くのを躊躇(ちゅうちょ)した位、藪枯(やぶがら)しの蔦(つた)が葡(は)い廻っていた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)