葡萄色ぶどういろ)” の例文
利鎌とがまのような月の出ている葡萄色ぶどういろの空に、一輪二輪とほころびかけている真っ直ぐな枝の、勢いよく伸びているのもいいものです。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
それが黒い鍔広つばびろの帽子をかぶって、安物やすものらしい猟服りょうふくを着用して、葡萄色ぶどういろのボヘミアン・ネクタイを結んで——と云えば大抵たいていわかりそうなものだ。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
屍体したいの肌は、もう葡萄色ぶどういろになっていた。わしは、わしの愛執あいしゅうのために、老母おふくろのそうした醜い顔をいつまでもこの世にさらしておくのを罪深く思った。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうそう。あの時山木のむすめと並んで、垂髪おさげって、ありあ何とか言ったっけ、葡萄色ぶどういろはかまはいて澄ましておどってたのは、たしか浪さんだっけ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
巌流は、浮織うきおりの白絹の小袖に、眼のさめるような、猩々緋しょうじょうひ袖無そでなし羽織をかさね、葡萄色ぶどういろ染革そめがわ裁附袴たっつけ穿いていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きん元結もとゆい前髪まえがみにチラチラしている、浅黄繻子あさぎじゅすえりに、葡萄色ぶどういろ小袖こそで夜目よめにもきらやかなかみしもすがた——そして朱房しゅぶさのついた丸紐まるひもを、むねのところでちょうにむすんでいるのは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)