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落寞
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らくばく
ふりがな文庫
“
落寞
(
らくばく
)” の例文
今日
(
きょう
)
はお嬢さんが上野の音楽会へ出かけて、一日お留守だった。お嬢さんが居ないと、己は非常に
淋
(
さび
)
しい。まるで家の
中
(
うち
)
が
落寞
(
らくばく
)
とする。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
実際
此
(
こ
)
の失恋でもない、
況
(
いは
)
んや得恋でもない、
謂
(
い
)
はゞ無恋の心もちが、一番悲惨な心持なんだ。此の
落寞
(
らくばく
)
たる心持が、俺には
堪
(
たま
)
らなかつたんだ。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
然りと雖も人老ゆるに及んで
身世
(
しんせい
)
漸く
落寞
(
らくばく
)
の思いに堪えず壮時を追懐して覚えず
昨是今非
(
さくぜこんひ
)
の嘆を漏らす。蓋し自然の人情怪しむに足らざるなり。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そこからは
落寞
(
らくばく
)
たる歓楽の
絃歌
(
げんか
)
が聞こえ、干からびた寂しい笑い声がにぎやかにもれて来る。——それは普通オランダ屋敷と呼ばれている「出島の
蘭館
(
らんかん
)
」である。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
秋風
落寞
(
らくばく
)
、門を出れば我れもまた落葉の如く、風に吹かれる人生の漂泊者に過ぎない。たまたま
行路
(
こうろ
)
に逢う知人の顔にも、生活の寂しさが暗く漂っているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
▼ もっと見る
この桟橋の
別
(
わかれ
)
には何となく
落寞
(
らくばく
)
の感があった。病み衰えた勝三郎は
終
(
つい
)
に男名取総員の和熟を見るに及ばずして東京を去った。そしてそれが再び帰らぬ旅路であった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
落寞
(
らくばく
)
たる冷たいこの部屋の中が温かい住心地のよい所に思われた。K君も時々覗きに来たがこの人の堅い顔が少し赤味を帯びてたいそう柔らかにあるいはむしろ愉快そうにも見えた。
病中記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
かくて、浅草は
落寞
(
らくばく
)
たる年の瀬を越し、淋しい初春を迎えたことであった。
幕末維新懐古談:15 焼け跡の身惨なはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
東京駅外が
落寞
(
らくばく
)
としているのもこれ等が重な原因である。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
広巳の眼の前には
落寞
(
らくばく
)
とした世界がひろがっていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
落寞
(
らくばく
)
とした
甲山
(
こうざん
)
の秋よ、
蕭々
(
しょうしょう
)
とした
笛吹川
(
ふえふきがわ
)
の秋よ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
例えばこの句の場合で、「酒屋」とか「
謡
(
うた
)
」とかいう言葉を使えば、句の情趣が現実的の写生になって、句のモチーヴである
秋風
(
しゅうふう
)
落寞
(
らくばく
)
の強い詩的感銘が弱って来る。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
満池
(
まんち
)
の敗荷はちょうど自分の別れを送る音楽の如く、荒涼
落寞
(
らくばく
)
の曲を
奏
(
かな
)
ではじめる。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
落寞
(
らくばく
)
として、さびしげなものがあった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落寞
(
らくばく
)
たる夜風がふたりを払ってゆく。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
寞
漢検1級
部首:⼧
13画
“落”で始まる語句
落
落胆
落着
落魄
落葉松
落人
落葉
落籍
落付
落語家