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落入
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おちいり
つき
恐る/\私し共は越後國
高田領の百
姓にて是なる女の
夫無實の罪に
落入遠からず
死罪に決し候へ共未だ存命にて
入牢仕つり居り候何卒
御殿樣の御
慈悲を以つて誠の御
吟味を
俄かに
暑氣つよくなりし
八月の
中旬より
狂亂いたく
募りて
人をも
物をも
見分ちがたく、
泣く
聲は
晝夜に
絶えず、
眠るといふ
事ふつに
無ければ
落入たる
眼に
形相すさまじく
此世の
人とも
覺えずなりぬ
傳吉は聞及び幸ひ上臺の
家斷絶を
嘆く折柄故其男子に傳吉より
憑司が田地の外に
若干の地を
遣し上臺の家を
相續成しめける眞に傳吉が行ひは
孝道と信義との徳にて無實の罪に
落入たるも死を
迯れ一生を