船艙せんそう)” の例文
船艙せんそうおおいにまで黒人植民兵を満載して仏領アフリカから急航しつつあった運送船が、アルジェリアの海岸近くでドイツの潜航艇にられている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
船艙せんそうの底にでもいるように、敷き詰めた敷物の上に胡坐あぐらを掻いて、今一人来客と、食味の話にふけっている先生の調子は、前よりも一層元気がよかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、事務長は、はるか離れた船艙せんそうの出口に田川夫妻とかなえになって、何かむずかしい顔をしながら立ち話をしていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おい、両人。おれを抱えて、三番船艙せんそうへつれていけ。そ、そして、おれのズボンの、左のポケットに、は、はいっている鍵で……その鍵で、扉をあけるんだ」
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
船の横腹に、四角な船艙せんそうの入口がひらいていて、桟橋から厚い渡板がかけてあります。水夫長は先に立って、その渡板を渡り、薄暗い船の中へ入って行くのです。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは黒い大雪崩おおなだれとなって、船艙せんそうへ文字どおりになだれ込んだ。仲仕は、その雪崩の下で、落ちて来る石炭を、すみの方へすみの方へと、ショベルでかき寄せた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
船艙せんそうの中の根本から雲間のこずえまでそれを測ってみると、長さ六十ひろを算し、根本の直径三尺に余る。イギリス船の大檣は、喫水線きっすいせん上二百十七尺の高さに及ぶものがある。
船艙せんそうにぎっしり押し込められて、上甲板に出るのは禁じられていたけれど、そっと入口から見上げると、月夜でね。かすかに煙突と帆柱が揺れているのが、月の位置で判る。
狂い凧 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
戦死者中福井丸の広瀬中佐および杉野すぎの兵曹長へいそうちょうの最後はすこぶる壮烈にして、同船の投錨とうびょうせんとするや、杉野兵曹長は爆発薬を点火するため船艙せんそうにおりし時、敵の魚形水雷命中したるをもって
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
少しの間船艙せんそうに隠れていて貰わにゃならんが、そこはだだっ広いから、君等は鱈腹食って飲んでころんでいてくれればいいので、その代り物音を立てたり、大声で饒舌しゃべったりしては不可いかんよ。
ローン号の船艙せんそうがひらかれ、一せきの軽火艇けいかていが乗組員をのせたまま、ぼちゃんと海上におろされた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水夫らは、デッキを洗う波浪からダンブル内への浸水をまもるために、ハッチカバー(船艙せんそうのおおい)や、それを押えた金具や、またその上から厳重にロープを通して縛らねばならなかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
もっとも密航するのだから、親子は船艙せんそうすみっこに窮屈きゅうくつな恰好をしていなければならなかった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
船艙せんそうから電話がかかってきたのだろう。おい、なんだ」と、船長が電話にかかった。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おう、火事だ、火事だ。第六船艙せんそうから、火が出たぞ。おーい、みな手を貸せ」
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき下の船艙せんそうから、なにかことんと物音がしたのを、二人は同時に聞きとがめた。その妙な物音は、ずっと下の船艙からきこえる。二人はその物音を追ってついに二番船艙の底まではいりこんだ。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ロロー殿下を生けどりにした報告が、そんなにロンドン市民を、刺戟しげきするとはおもわなかった。いや、ぼくの失敗だ。では、ロロー殿下を船艙せんそうの奥にうつして、安全をはかるというのはどうだろう」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「えッ、第一船艙せんそうが爆破した? ほんとか、それは。大穴があいて海水が浸入! 防水ドアがしまらないって? 機関部へ水が流れ込んでいる。エンジンはどうした。機関部も故障だというのか。船長? 船長は、ここにいられるが」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)