背姿うしろすがた)” の例文
幸村は、大助の背姿うしろすがたを見、「昨日誉田ほんだにて痛手を負いしが、よわるていも見えず、あの分なら最後に人にも笑われじ、心安し」
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
鶴沢宮歳つるさわみやとしとあるのを読んで、ああ、お師匠さん、と思う時、名の主は……早や次の葭戸越よしどごし背姿うしろすがたに、うっすりと鉄瓶の湯気をかけて、一処ひとところ浦の波が月に霞んだようであった。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どこから伴れて来るだろうと思って、私は女の背姿うしろすがたにらむように見守っていると、彼女は重ね箪笥の上に置いてあった長い箱を取り下ろして、ふたをあけて、その中から大きな京人形を取り出した。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
草がくれのこみち遠く、小川流るる谷間たにあい畦道あぜみちを、菅笠すげがさかむりたる婦人おんなの、跣足はだしにてすきをば肩にし、小さきむすめの手をひきて彼方あなたにゆく背姿うしろすがたありしが、それも杉の樹立こだちりたり。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
草がくれのこみち遠く、小川流るる谷間たにあい畦道あぜみちを、菅笠すげがさかむりたる婦人おんなの、跣足はだしにてすきをば肩にし、小さきむすめの手をひきて彼方あなたにゆく背姿うしろすがたありしが、それも杉の樹立こだちに入りたり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
背姿うしろすがたせわしそうに、机の前なる紅入友禅べにいりゆうぜん唐縮緬とうちりめん、水に撫子の坐蒲団すわりぶとんを、するりと座敷の真中まんなかへ持出したは、庭の小菊の紫を、垣からのぞく人の目には、うなじの雪もくれないも、見え透くほどの浅間ゆえ
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)