職業しごと)” の例文
キャラコさんは、ここから御殿場ごてんばのほうへくだり、茜さんは、仙石原せんごくばらのほうへおりて、それから東京へ職業しごとをさがしに行くのである。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「だから僕も田舎をめて来たような訳さ。それに、まあ差当りこれという職業しごとも無いが、その内にはどうかなるだろうと思って——」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬乗うまのりの上手な者が馬丁べつたうになり、女の手を握る事の好きな男が医者になるやうに、すべての芸能は、その人に職業しごとを与へて呉れるものだ。
職業しごと粗略おろそかにするは大の嫌ひ、今若し汝の顔でも見たらば又例の青筋を立つるに定つて居るを知らぬでもあるまいに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「どうして突然こんな話をはじめたか、あなたは変に思われるでしょうが、実はこの事件がそもそも私をこんな職業しごとに導いた動機だと云ってもいいのですよ」
消えた霊媒女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
『又、叱られたんでしょう。ここが、こらえどころですよ。んな職業しごとだって、修業の道は辛いものと極っています』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうその職業しごとにかえれなくなったことを悲観しているらしいので、私は思わず同情していった。
今度はまた信吾の勧めで一夏を友の家に過す積りのきまつた職業しごととてもない、暢気のんきな身上なのだ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
三月の間というもの、職業しごとを職業をと、朝に出ては夜になって帰って来た。当然自分の負わなければならない経済上の責任を妻に負わして置いて、他に勝手な自分の生活をひらいているのだ。
接吻を盗む女の話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
(自分は根本行輔の口からこの物語を聞いて居るので)昼間の職業しごとを終つて夕飯を済すと、いつも其処に行つて、娘の子の話やら、喧嘩の話やら、賭博ばくちの話やら、いろ/\くだらぬ話を為て
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
だつて職業しごとはどうなンの?
若い漁師はそれを聞いて、この人たちは詩を作ることを、魚を獲ることと同じように、立派な職業しごとだと考えているらしい。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
「あなたがこういうお職業しごとをしていらっしゃるという事を承わっていましたので、実は急にお力を拝借したいと思って突然御都合も承わらずに伺いまして——」
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
遊ぶはよけれど職業しごとの間を欠いて母親おふくろに心配さするようでは、男振りが悪いではないか清吉
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「明日は日曜だから。どう? あなたの職業しごとの方は。やっぱり駄目?」
接吻を盗む女の話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
午餐おひるが濟んで、二人がまだお吉と共に勝手にゐたうちに、二人の奉公口を世話してくれたといふ、源助と職業しごと仲間の男が來て、先樣さきさまでは一日も早くといふから、今日中にる事にしたらどうだと言つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ところが今では女の好みも大分移り変つて、聟選みをするには、成るべく男の職業しごとが忙しいのを好くといふ事だ。
遊ぶはよけれど職業しごとを欠いて母親おふくろに心配さするやうでは、男振が悪いではないか清吉
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
午餐ひるめしが済んで、二人がまだお吉と共に勝手にゐたうちに、二人の奉公口を世話してくれたといふ、源助と職業しごと仲間の男が来て、先様では一日も早くといふから、今日中に遣る事にしたらどうだと言つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「え、新聞記者だつて……」女の母親は飛び上るばかり吃驚びつくりした。「新聞記者のやうな、そんな忙しい職業しごとてる男に、うちの娘は添はせたくないものですね。」
ベンヂヤミン・フランクリンが女房かないを迎へようとした時、その女の母親は聟がねフランクリンの職業しごとは何かと訊いて寄こした。フランクリンは幾らか自慢のつもりで
わかい時には誰しも自分の身の方向に迷ふものだが、アメリカのある少年が、自分にはどんな職業しごとが向いてるか知らと、色々思案の末がよくあるならひで人相見のとこに出かけて往つた事があつた。