)” の例文
やがて、とある四つ角へさしかかると、彼女は怪訝そうに立ちどまって、指を一本あげてくちを半開きにしたまま、じっと聞き耳をてた。
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
と例の大声でののしるのが手に取るように聞えた。村長は驚いて誰が叱咤しかられるのかとそのまま足をとどめて聞耳をてていると、内から老僕倉蔵がそっと出て来た。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
軒下のながれも、その屋根を圧して果しなく十重とえ二十重はたえに高くち、はるかつらなる雪の山脈も、旅籠はたご炬燵こたつも、かまも、釜の下なる火も、はては虎杖の家、お米さんの薄色の袖、紫陽花あじさい
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「恋は恋さ、何んだつてそんな事を聞くんです。」と湯村はせた肩をてた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
彼は懐中電燈を消して、闇の中に佇立ちょりつした。それから、背を丸めて頸を前方へのばし、呼吸いきを殺して聞き耳をてながら、じっと暖炉棚の方をのぞきこんだ。
空家 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
かぜ一息ひといきぬ、眞空しんくう一瞬時いつしゆんじには、まちも、屋根やねも、軒下のきしたながれも、屋根やねあつしてはてしなく十重とへ二十重はたへたかち、はるかつらなゆき山脈さんみやくも、旅籠はたご炬燵こたつも、かまも、かましたなるも、はて虎杖いたどりいへ
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
犬は首をあげ、耳をしゃんとてて、雑鬧ざっとうの中を進んで行った。交通の頻繁うるさい街を横ぎるときなどは、鎖をピンと張るようにして、機敏に主人を導くのであった。
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)