聚落じゅらく)” の例文
秀吉の聚落じゅらくていに、蒲生飛騨守がもうひだのかみ浅野弾正あさのだんじょうなどが寄りあっていたとき、前田家の徳山五兵衛と斎藤刑部さいとうぎょうぶの二人がそこへまかり出て
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弾崎はじきざきの燈台から西は、浪打ち際までが多くは草の原で、遠く近く咲く花にはとりわけて珍しいものもないが、いずれも自然の聚落じゅらくをなして、この郊外の秋の野のごとく入乱れてはいなかった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
聚落じゅらく安芸あき毛利もうり殿のちんにて連歌の折、庭の紅梅につけて、梅の花神代かみよもきかぬ色香かな、と紹巴法橋がいたされたのを人〻褒め申す」と答えたのにつけて、神代もきかぬとの業平なりひらの歌は
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天王寺を中心とする荒陵あらばか聚落じゅらくには、こまかい庶民の屋根が、低地低地に密集している。そしてここにも散所民さんじょみんの生態がそっくりあった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半信半疑、また歩き出して、一叢ひとむらの森道を抜けてみると、なんと、そこには忽然こつぜんと、かなり賑やかな田舎いなか町の一聚落じゅらくがガヤガヤと喧騒けんそうしていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな聚落じゅらくがあったとは今日までまったく気もつかなかったぞ。あほう、どうしてわが輩はいままで五台山下に門前町があるべきことを思わなかったのか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
引付衆ひきつけしゅう問注所もんちゅうじょ執事、侍どころ所司しょし、検断所、越訴えっそ奉行などのおびただしい鎌倉使臣が居留しているその政治的聚落じゅらくも、いつか百年余の月日をここにけみしていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらにはまた、百里二百里の外にまで、小作百姓の聚落じゅらくを擁しているので、その勢力と財富とは、えんとして、一国の王侯もおよばぬほどのものだというのであった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこの勝曼院愛染堂しょうまんいんあいぜんどうが、彼の本陣とする所かとみえる。といって、ここにもたくさんな将士は見えなかった。ほとんどは、低地一帯の聚落じゅらくのうちに隠されているのらしい。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ために、賀名生の山中は、にわかに聚落じゅらくをなして、そこらの辻堂やしずの小屋まで幔幕まんまくを引き、はや一統の朝廷と群臣の綺羅星きらぼしはここに在りとばかりな盛観であったという。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこかでは、刀鍛冶の澄んだ鎚音つちおとがひびいている。行くほどに、「後藤助光」と木札を打った一軒の門もながめられた。さらに行くと、もっと軒ばを接しあった長屋の一聚落じゅらくが騒音とともにあった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠くからでも明らかに皇居の大内裏だいだいり十二門の一劃とわかる官衙殿堂が、孔雀色くじゃくいろいらか丹塗にぬりの門廊とおぼしき耀かがやきを放ッて、一大聚落じゅらくをなしており、朱雀すじゃく、大宮などを始め、一条から九条までの大路おおじ
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして聚落じゅらく殷盛いんせいな炊煙が朝夕に立ち昇っていたものと思われる。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)