習慣ならひ)” の例文
また汝のために憂へず、されど告げよ、汝何ぞこゝに坐するや、導者を待つか、はたたゞ汝のりし習慣ならひに歸れるか。 —一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「仕方がありませんよ、奥さん。実は土地ところ習慣ならひで、私の故郷くにではさうしなければならない事情があるのです。」
たづねければ口惡善くちさがなき下女の習慣ならひあれこそ近在の大盡だいじん娘御むすめごなるが江戸のさる大店おほだな嫁入よめいりなされしが聟樣むこさま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夜明よあけがたまでんな風で遊びあか習慣ならひだが、晶子が室内に濛濛もうもうとして出場でばを失つて居る煙草たばこの煙に頭痛を感じると云ふので十二時少し過ぎに帰つて来た。(六月十七日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
打ち展いた空を自由に眺められない、繁華な街にうまれたからだといはれるかも知れないが、私は、どんな心急こゝろせはしい時でも、車があの邊にかかると、ふつと窓から空を見上げるのが習慣ならひになつてゐる。
東京に生れて (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
それひとの性は善なりと雖ども習慣ならひに因て惡となるといひまた衆生しゆうじやうは皆惡人なれど信心しんじんの徳に因て惡趣あくしゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
容貌きりやうが能く音羽小町と綽名あだなにさるゝ程にてあればうぢなくて玉の輿に乘る果報くわはう愛度めでたく其日消光くらしの賣卜者の娘が大家のよめに成なら親父殿まで浮び上り左團扇ひだりうちはに成で有らうと然ぬだに口やかましきは棟割長屋むねわりながや習慣ならひとて老婆もかゝも小娘もみな路次口に立集たちつどかしましと讀むじだらくの口唇くちびるかへ餞舌おちやつぴいねぐらもとむる小雀の群立騷むらだちさわぐ如くなり斯くとは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)