繊細きやしや)” の例文
鴈治郎はとしよつた尼さんのやうな寂しさうな眼もとをして、をふつた。そのは女の涙を拭いてやるために態々わざ/\拵へたやうに繊細きやしやに出来てゐた。
白い繊細きやしやな躰と、やゝ黄色い、これも尫弱ひよわさうな躰が、略〻同じやうな脊丈をもつて、二人とも断髪姿で何か嬉しさうに話しながら浴場へおりて来ると
草いきれ (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
其間そのあひだに褐色の屋根や白い壁をもたげて田舎家ゐなかやが散らばり、雨上りの濁つた沼のほとりには白まだら黄牛あめうしが仔牛をれて草をみ、遠方の村村むらむらの上にそびえた古い寺院の繊細きやしやな尖塔が、白楊はくやうのひよろ長い
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「居ませうとも。聖書にちやんと書いてありますよ。」と牧師は女のやうな繊細きやしやな手をして革表紙の聖書をとんと叩いた。
「何だつてそんなに不機嫌な顔をしてるの。」女房かみさんは繊細きやしやな手先でお銚子の加減を見ながら心配さうに言つた。「今聞けばお前さんの評判が一番いといふのぢやないの。」
私達の味覚は嗅覚だの聴覚だのと一緒に漸次だん/″\繊細きやしやに緻密になつて来たに相違ないが、其の一面にはお互の生活に殆どゆつくり物を味ふといふ程の余裕ゆとりが無くなつて、どうかすると刺戟性しげきせいのもので
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
トオマス嬢はある日の夕方ゆふかた美しく刈込まれた学校の校庭カムパスを散歩してゐた。晩食ばんめし消化こなれのいゝ物でうまく食べたし、新調のくつ繊細きやしやな足の裏で軽く鳴つてゐるので、女博士をんなはかせはすつかりいい気持になつた。
若い弟子の手首はをんなの握り易いやうに繊細きやしやに出来てゐた。