繁々しげしげ)” の例文
スタールツェフはやって来たが、それ以来というもの彼は繁々しげしげと、すこぶる繁々とトゥールキン家のしきいをまたぐようになった。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こんな者が繁々しげしげ入り込んでは、ほかの信者の手前もあり、もう一つには善昌の方にも何かうしろ暗いことがあって……これは当人がどうしても白状せず
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
生身の如来が繁々しげしげ便所に立つということは、どんなに冒涜的で馬鹿馬鹿しくて、そしてべらぼうなことでしょう。
それからは源氏の見舞いの使いが以前よりもまた繁々しげしげ行った。そうして七、八日ののちに御息所は死んだ。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一週間とち、二週間と経つ。昇は、相かわらず、繁々しげしげ遊びに来る。そこで、お勢も益々親しくなる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
繁々しげしげとその喫茶店の土壇に坐るようになったのは、その店が学校の通路にあったという都合ばかりではなく、「墓地展望亭」というその名の好尚このみの中に、なんとなく
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しかしこの際申し上げる、今後はあのような下々の場所などへは、あまり繁々しげしげと参られぬがよろしい
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一種の見得にさえ感じて、柾木の方ではむしろ避ける様にしていたにも拘らず、繁々しげしげと彼を訪ねては、少しばかり見当違いな議論を吹きかけることを楽しんでいたのである。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
全く私は笠神博士の所へは繁々しげしげ出入した。今では私は博士をただに恩師としてでなく、慈父のように慕っているのだ。静かに考えて見ると、私は別にその為に恐れる所はないのだ。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それから後と申すものは、三月より四月、四月より五月と、だんだんに夫の外出が繁々しげしげになりまして、遂には三日も四日も、いづれへか行きて、家に帰らぬことなどもありました。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「あれほど繁々しげしげ来た小原さんも、近ごろはかんぎらともしないね。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ただ小六ころくだけが時々話しに出かける様子であったが、これとても、そう繁々しげしげ足を運ぶ訳でもないらしかった。それに彼は帰って来て、叔母の家の消息をほとんど御米およねに語らないのを常としておった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことに、家族の人達とは、あまり繁々しげしげと接近なさらないように——。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「寅吉さんはお小夜のところへ繁々しげしげ通っていたようで、これは町内で知らない者はありません。もっともお小夜は何と言っていたか、そこまでは判りませんが」
零落おちぶれ果てた大男が、この藪原へ参りまして、私の父のもとへなど繁々しげしげ出入りを致しているうち、いつの間にか父を騙着たぶらかし、父に代って私の家のたばねをするようになりました。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それが、私が参ってから半年ばかりというものは、忘れた様に、土蔵のそばへ足ぶみもしなくなっていたのが、ついその頃になって、又しても、繁々しげしげと土蔵へ入る様になって参ったのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私と海野君の交りはきわめて淡いものであったが、今となって、もう少し繁々しげしげと往来して、海野君の良さに接して居るべきであったという、大きな悔に悩んでいる。
永く当家のかねご用を勤めるあの大鳥井紋兵衛のやしきへ、最近繁々しげしげ妖怪で紋兵衛を悩ますということであるが、当家にとっては功労ある男、ただし少しく強慾に過ぎ不人情の仕打ちもあるとかで
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「解らない。まるっきり解らない。とにかく染吉の繁々しげしげ出入りする家を探すことだ」
繁々しげしげお茶屋へは呼んでくれる、パッパッと御祝儀は切ってくれる。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もっとも、山口屋も浮気で、お政に飽きて、山谷のお寿のところへ繁々しげしげ行くようになったそうですから、お政にしてみれば、冷飯食いの又次郎の機嫌などを取っちゃいられなかったでしょう
「いちばん繁々しげしげ通うのは誰だい」