糊気のりけ)” の例文
裾短すそみじかでそでひじより少い、糊気のりけのある、ちゃんちゃんを着て、胸のあたりでひもゆわえたが、一ツ身のものを着たように出ッ腹の太りじし太鼓たいこを張ったくらいに
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これはまた糊気のりけのぬけた皮肉な、いつもの型とは打つて変つた冷いり方なので、鴈治郎の判官は刀へ手をかける事も出来ないで、大弱りに弱つてしまつた事があつた。
陰気な黒ずんだ赤の掻練かいねり糊気のりけの強い一かさねの上に、贈られた柳の織物の小袿こうちぎを着ているのが寒そうで気の毒であった。重ねに仕立てさせる服地も贈られたのであるがどうしたのであろう。
源氏物語:23 初音 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一昨日おとといあたり結ったままの束髪そくはつだった。癖のない濃い髪にはたきぎの灰らしい灰がたかっていた。糊気のりけのぬけきった単衣ひとえも物さびしかった。そのがらの細かい所には里の母の着古しというようなにおいがした。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
すそみぢかでそでひぢよりすくない、糊気のりけのある、ちやん/\をて、むねのあたりでひもゆはへたが、一ツのものをたやうにばらふとじゝ太鼓たいこつたくらゐに、すべ/\とふくれてしか出臍でべそといふやつ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)