簿)” の例文
随身ずいじんの一名が、軍奉行から簿を取って、列将の姓氏をふたたび点呼してゆくと、簿名ぼめいにはありながら、ここには見えない一将があった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、児島高徳の名も、ここの参陣の“簿”のうちでは一個の小ヌカ星的な存在でしかなく、忠顕にも何の印象すらないようだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「諸方で捕えた落人は、一応みな内山永久寺へ曳いて来い。そして備えの“捕虜ノ簿”に氏名をせ、後日の恩賞を待つがいい」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんの、武者所の簿れば、まだまだ鎌倉山の将は綺羅星きらぼしだ。わけて、当然出陣せねばならん者が、軍勢発向もよそに、いまだに顔すら見せおらん」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる軍紀のゆるみが見ゆればこそ、皇帝も特にこの高俅へ重任を命ぜられたものではある。しかるに、出頭しゅっとう簿へ名をのぼせながら、今日の馬揃うまぞろえに、姿を
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ですからご管下の牢営にいる済州さいしゅう流人るにんでしょう。すぐ牢営の蔵帳官に、簿けんせよと、お命じなされませ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、簿を取り寄せて、まだ誰にも打ち明けなかった、秘密の予備軍があることを初めて明らかにした。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
簿の上では、充分なはずですが、まま、令に応じぬ大名が、なかなか、動かぬためでございます」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして各〻、簿を見ながら、今川の奉行下に千七百余人、また吉良の動員によって千四百人と告げ
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お待ち下さい。さっき師直が、降参の将の簿を作って、お目にかけるといっておりましたから」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「船田の入道。——このひまに夜来の人名を簿に書きあげ、またその新参どもを、岩松、脇屋、そのほか諸将の隊に配属して、たそがれまでに、すべて陣容を新たにしておけ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まア聞け。ともかく御厨みくりやノ伝次に駒を曳かせ、人見新助に弓持たせて、たつくち木戸の奉行ノ簿に、試合の申し出でをせんとまいッてみると、果たして、道誉が先に待っておった」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
部下の簿を呈して来る者やらで、そこは諸国の武者の色で、さながら武者市のかんを呈し、正季らも、それらの降人を受け容れる忙しさに手いッぱいで、遠く潰乱しつづけてゆく敵へ
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、眼をとじながら、連判の簿を読むように、全国にわたる隠れた宮方の武士の名を記憶のままに挙げて行った。それを、道誉はじっと、聞きすまして、いちいち胸にきざんでいた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、高氏の床几所しょうぎじょへ、その簿を持って報告にくるたびに、こういうのが常だった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、正成は、うるみ声で、兵の簿にあたまを垂れた。そうした純烈なものを知ると断腸だんちょうの責めに衝かれるらしい。謝する言葉もないふうだった。が、そのまま了現の手へ、簿を返して
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日以後、正成と連れ立つ者は、さいごまで、正成との同行を悔いとせぬ者だけにかぎる。簿しるしした以外の武士でも、帰るが望みという者あれば、こころよく、今朝こんちょう、放ちやるがいい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは、姓氏を簿に書きのぼすとき、賄賂まいないを吏員に贈らなかったからでしょう」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正季まさすえは、簿を受け取って、仔細に見てゆきながら。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、簿を取寄せていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)