節々ふし/″\)” の例文
「今こゝにゐらつしやるよ。」外交官は節々ふし/″\の高い指で皺くちやな夫人の顔を撫で廻した。「演説はたしかに大受けだつたね。」
蘿月らげつは若い時分じぶんしたい放題はうだい身を持崩もちくづした道楽だうらく名残なごりとて時候じこう変目かはりめといへば今だに骨の節々ふし/″\が痛むので、いつも人よりさきに秋の立つのを知るのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
節々ふし/″\の痛みがおびたゞしく毛穴が弥立よだって、五臓六腑悩乱のうらん致し、ウーンと立上るから女房は驚いて居ると、喜助は苦しみながら台所へ這い出してガーと血の塊を吐いて身を震わして居る。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二十三年の今まで絶えておぼえなき異樣の感情くもの如く湧き出でて、例へばなぎさを閉ぢし池の氷の春風はるかぜけたらんが如く、若しくは滿身の力をはりつめし手足てあし節々ふし/″\一時にゆるみしが如く
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
乳母 はれ、まア! そのやうにあつくならッしゃるな。これさ、まァ、ほんに/\。それがいた節々ふし/″\塗藥ぬりぐすりになりますかいの? これからは自分じぶん使つかあるきをばさっしゃったがよい。
そして指の節々ふし/″\が女のそれのやうにふつくりしてりがはいつてゐたさうだ。
武士の名殘も今宵こよひを限り、餘所よそながらの告別とは知り給はで、亡からん後まで頼み置かれし小松殿。御仰おんおほせかたじけなさと、是非もなき身の不忠を想ひやれば、御言葉の節々ふし/″\は骨をきざむより猶つらかりし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)