管々くだくだ)” の例文
その後津村がこれらの文書を手がかりとして母の生家をきとめるに至った過程については、あまり管々くだくだしく書くまでもなかろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いわば私事わたくしごとになって、特に何かの参考となることでもありませんから、深く立ち入り、管々くだくだしくなることは避けたいと思います。
ショーウインドや内部の模様はあまり管々くだくだしくなるから略するが、要するに外観と同様変化自在で、その大部分は俗悪な壁紙、色ペンキ
それからの騒ぎは、管々くだくだしく申上げる迄もない。気絶した瑠璃子は、介添えの人々によって、会堂からわしの新居へと運ばれた。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
管々くだくだしいことは一切ぬき。ただ存分に遊んでくれという神妙な風情である。そして、軽快な、行き届いたゆかしさがしのばれるような風情である。
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
筆を進めて其謬見の謬見たる所以ゆゑんを精窮するは評家の義務かも知れず候へど、自明の理を管々くだくだしく申上ぐるも児戯に等しかるべく候に付、差控へ申候。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
盃がまだ卓子テーブルの上に、帰らぬ前に既に呼吸が止っているという彼の青酸加里カリーも、実に管々くだくだしい毒物には相違なかったけれども、それを実行した先輩も少くないので
仲々死なぬ彼奴 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そういう挿話ものこされているのであるが、それはここでは詳しく説くまい。往昔むかしの戯作者の口吻くちぶりになぞらえ、「管々くだくだしければ略す」とでもいわせて置いてもらおうか。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
管々くだくだしけれど雑と此の話に関係の有る点だけを塔の履歴として述べて置こう。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
管々くだくだしく書くまでもない。文代のピストルにおどかされながら、彼等は瞬く内に、一人一人、身動きもならぬ様に縛り上げられてしまった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
話が大変管々くだくだしくなって煩わしいが、委曲話すだけは話しませんと自分の思惑おもわくが通りませんから話して置きますが、ちょっと話しが少し戻って
そいから先の出来事はの新聞にもあないくわしいに出ましたぐらいで、先生かてよう御承知ですやろし、もうもうそないに管々くだくだしいに過ぎ去った日のことお聞かせせんかて、……何や私も
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこで、管々くだくだしくあるかは知らぬが、名代、名物といったようなものを眼の先にチラツクまま話して行きましょう。
管々くだくだしいので一々は書かなかったけれど、事件が起ってからも、彼は度々妙子と二人切りで話をする機会があった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ここにそれらの管々くだくだしい叙述を並べ立てることを避けて、直ちにその結果に話を進めることにする。
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私がどんなに彼女を愛したか、それは、ここに管々くだくだしく申し上げるまでもありますまい。彼女は、私の始めて接した日本人で、しかも十分美しい肉体の持主でありました。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その詳細は、あまり管々くだくだしくなりますから、ここには省くことに致しますが、兎も角、調査の結果は、彼の計画が決して不可能事でないことを明かにしたのでありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
蟹の生肉に餓をしのぎ、洞窟の天井から滴り落ちる僅かの清水にかつを癒して、何十時間、私達は果しもしらぬ迷路の旅を続けた。その間の苦痛恐怖色々あれど、余り管々くだくだしければ凡て省く。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つまりDが往、Eが復の足跡であることが分る。(波多野氏はこの両方の歩幅を精密に計り、賊の身長計算の基礎として、その数字を書とめたが、ここでは余り管々くだくだしくなるから省いて置く)
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
管々くだくだしく写し出すことは差控さしひかえるが、そのかん、例の床の間に安置された妙な木箱の中からと覚しき、嗄声の安来節は、これより下手には歌えないと思われる程まずい節廻しで、切れては続き
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
作者申す、右のほか十数名の顕官、富豪、最高爵位の人々、元老⦅明智丈けは例外の素寒貧すかんぴん⦆などの名前が列記してあったのだけれど、管々くだくだしければ凡て略し、名前の下に番号の打ってある六名丈けを
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)