まど)” の例文
いづれの家にても雪は家よりもたかきゆゑ、春をむかふる時にいたればこゝろよく日光ひのひかりを引んために、あかしをとる処のまどさへぎる雪を他処へ取除とりのくるなり。
まだ十二時前なのに河岸通かしどおりから横町一帯しんとして、君香の借りている二階のまども、下の格子戸も雨戸がしまっています。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
長い陰気なこのごろの雨の日の毎日毎日に、彼の沈んだ心のまどである彼のひとみを、人生の憂悶いうもんからそむけて外側の方へ向ける度毎に、彼の瞳に映つて来るのはその丘であつた。
くもりの顔に映る 大空のまどの薔薇の花。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
さうしてこの怠惰のまどの中から
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
氏はれるまどうしろで——。
北原白秋氏の肖像 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
いづれの家にても雪は家よりもたかきゆゑ、春をむかふる時にいたればこゝろよく日光ひのひかりを引んために、あかしをとる処のまどさへぎる雪を他処へ取除とりのくるなり。
人力車じんりきしゃから新橋の停車場ていしゃじょうに降り立った時、人から病人だと思われはせぬかと、その事がむやみに気まりがわるく、汽車に乗込んでからも、帽子を眉深まぶかにかぶり顔をまどの方へ外向そむけて
十六、七のころ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さて雪中は廊下らうかに(江戸にいふたな下)雪垂ゆきだれを(かやにてあみたるすだれをいふ)くだし、(雪吹ふゞきをふせぐため也)まども又これを用ふ。雪ふらざる時はまいあかりをとる。
やうやく雪のやみたる時、雪をほりわづかに小まどをひらきあかりをひく時は、光明くわうみやう赫奕かくやくたる仏の国に生たるこゝち也。此外雪こもりの艱難かんなんさま/″\あれど、くだ/\しければしるさず。
その雪えりふところに入りてつめたきたへざるを大勢が笑ふ、まどよりこれをるも雪中の一興いつきやうなり。