みそぎ)” の例文
この人を思う心も縷々るると言われるのに中の君は困っていて、恋の心をやめさせるみそぎをさせたい気にもなったか、人型ひとがたの話をしだして
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
イザナギの命は黄泉よみの國からお還りになつて、「わたしは隨分いやきたない國に行つたことだつた。わたしはみそぎをしようと思う」
官兵衛孝高がその地の惣社大明神そうしゃだいみょうじんに七日間のみそぎをとって、神前に新しい旗幟きしをたてならべ、神酒みきをささげ、のりとを奉じ、家士一統、潔斎けっさいして
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このエッセネ派というのはヨルダン川の東荒野地方に居住して粗衣粗食、独身の禁欲生活をなし、しばしば断食し、また一日に何度も川に飛び込んでみそぎをしました。
菊理姫命は伊弉諾尊いざなぎのみことが黄泉の国からおかえりになった時、みそぎのことをおすすめ申した神である、従って伊弉諾伊弉冉いざなみの二神が合せ祀られるに至ったことは自然である。
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
此の清らかさは上代のみそぎの行事と相通ずる日本美の源泉の一つのあらわれであって、これがわれわれ民族の審美と倫理との上に他民族に見られない強力な枢軸を成して
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
そういえば誰も知っているはずのないあたしの寝室の位置が〈憲兵特高隊みそぎ隊〉のリストに書きこまれていたのは、こいつの仕業だとあのときすぐ考えてよかったんだ。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しかし武内宿禰たけのうちのすくねだけは、お小さな天皇をおつれ申して、けがはらいのみそぎということをしに、近江おうみ若狹わかさをまわって、越前えちぜん鹿角つぬがというところに仮のお宮を作り、しばらくの間そこに滞在たいざいしておりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
姉の服喪の期間は三月であって、除服のみそぎを行なうことになっているのも飽き足らぬことに中の君は思った。
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かくてタケシウチの宿禰がその太子をおつれ申し上げてみそぎをしようとして近江また若狹わかさの國を經た時に、越前の敦賀つるがに假宮を造つてお住ませ申し上げました。
神殿に行って燔祭はんさいなどの犠牲を捧げることに救いがあるわけではない。その点ではエッセネ派も宗教改革者でした。しかしエッセネ派の荒野の難業苦業やみそぎの生活にも救いがあるのではない。
「ああ、かれらは、無自覚のうちに、みそぎしているのだ……」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身にしむお話でございますけれど、人型とお言いになりますので『みたらし川にせしみそぎ』(恋せじと)というようなことが起こるのではないかという不安も覚えられます。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そこでイザナギの命は、地下の世界を訪れ、またこの國に歸つて、みそぎをして日の神と月の神とが目を洗う時に現われ、海水に浮き沈みして身を洗う時に、さまざまの神が出ました。
「恋せじと御手洗みたらし川にせしみそぎ神は受けずもなりにけらしな」
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)